時代遅れの戸別訪問がネックに 国勢調査員を確保できず頭抱える自治体

AI要約

島根県内の統計調査員の確保に関する調査結果を公表。14市町が調査員を確保できていないと回答。都市部の松江市が特に深刻で、調査員不足を市職員や自治会の協力で補っている。

調査員の精神的負担や調査作業のアナログ化、低報酬などの理由で調査員の確保が困難。国による調査の方法に疑問が投げかけられている。

島根県は国に改善を求め、他の中国地方4県も調査員確保に苦労している。自治会の協力やオンライン調査など抜本的な転換が必要とされている。

時代遅れの戸別訪問がネックに 国勢調査員を確保できず頭抱える自治体

 島根県は、国勢調査などを担う統計調査員の確保について県内の全19市町村に初めて聞き取り調査し、14市町が「確保できていない」と回答した結果を公表した。2020年の前回国勢調査で、必要な人数の1割未満しか確保できない市もあった。戸別訪問が時代にそぐわないとして、国に見直しを求める。他の中国地方4県も足りないとし、調査の方法に疑問が投げかけられている。

 5年に1度の国勢調査が25年に控える中、自治体の訴えを受けて5月に調べた。現状について、「確保できないため他の手段で対応している」が松江、浜田、邑南、益田市など14市町、「苦労しているが確保できている」が美郷、津和野町など5市町村、「確保できている」はゼロだった。

 特に都市部の松江市が深刻だ。20年の国勢調査で1213人が必要とされたが、確保できたのは107人のみ。不足の1106人の多くを市職員や自治会の協力などで対応した。通常1人1、2調査区(約50~100世帯)を、3~5区受け持つケースもあった。

 各市町村は困難とする理由に、調査員の精神的負担が大きい▽調査区の地図を手作りするなど作業がアナログ▽報酬が低い―などを挙げる。

 県統計調査課によると、国勢調査は対面での説明と配布が原則で、地図作りを含めて約1カ月半で一気に進める。防犯意識の高まりで居留守を使う世帯やオートロックのマンションが多く、何度訪れても渡せないケースが増えている。

 同課は、調査の依頼をオンラインにするなど抜本的な転換が必要とし、6月に都道府県統計連絡協議会を通じて国に改善を求めた。丸山達也知事も記者会見で「調査員の負担が大きく、回収率が下がる。そのデータを基に国の政策が作られるのは社会全体にもマイナスになる」と指摘した。

 広島県は「確保が厳しいのは事実。各調査後の報告会で各市町から聞いている」とする。山口県は「調査では地域をよく知る自治会の協力を優先し、その協力を不足分と捉えていない」と不足感には各県で違いがあると説明。その上で自治会自体も高齢化が進み「必要な人数を集められるか危機感はある」と言う。

 島根県の公表を受け、鳥取県は各市町村への聞き取りを準備する。岡山県は個別に10市町に聞き取り「足りているという市町はない。どこも頭を悩ませている」と明かした。