輪切り解体「異論ない」 ビル倒壊で妻娘犠牲の楠さん

AI要約

能登半島地震で倒壊したビルの下敷きになった居酒屋の店主がビルの解体に異論はないが、倒れた原因の究明を求める。

楠さんは亡くなった妻と娘をしのびながら、地震で家族のいた場所に花を手向ける。

市民の早期解体を求める声に共感しつつも、現場を見るたび気持ちがリセットされる楠さんの複雑な思い。

輪切り解体「異論ない」 ビル倒壊で妻娘犠牲の楠さん

 能登半島地震で倒壊した7階建てビルの下敷きになった居酒屋の店主、楠健二さん(56)が19日、輪島市内の倒壊現場を訪れた。市がビルの公費解体に向け、上層部から順に「輪切り」にして取り壊す工法を検討していることについて「解体に異論はないが、なぜ2人が犠牲になったのか、ビルが倒れた原因の究明はしてほしい」と語った。

 楠さんは輪島市河井町で居酒屋「わじまんま」を切り盛りしていた。元日の地震で隣接する輪島塗老舗「五島屋」のビルが横倒しになり、妻由香利さん=当時(48)=と長女珠蘭(じゅら)さん=同(19)=が亡くなった。かつて家族で暮らした川崎市で6月に店を再開して以来、初めて現場に足を運び、花を手向けた。

 市には「倒れたビルを見るたび気持ちが沈む」などと、早期解体を求める声が寄せられている。楠さんはそうした声に「痛いほど分かる。俺自身、前に進もうにも、ここ(現場)に来るたび気持ちがリセットされる。原因調査に影響がないのなら、ビルの解体を始めてほしい」と話した。