南海トラフ地震臨時情報、大分県内経済に影響 県南部では宿泊キャンセル相次ぐ 防災対策の再確認や見直しの動きも

AI要約

南海トラフ地震の発生により、県内経済に大きな影響が出た。盆休み期間に宿泊施設でのキャンセルが相次ぎ、多くの業界に巨大地震と津波への危機感が広がっている。

南海トラフ地震の被影響地域では、旅館やホテルなど宿泊施設が大きな損失を被っており、避難誘導の備えを再考する動きが出ている。

観光業だけでなく、家具店などの業界でも防災対策や非常時の備えが強化されつつあり、地震注意に対する警戒感が高まっている。

南海トラフ地震臨時情報、大分県内経済に影響 県南部では宿泊キャンセル相次ぐ 防災対策の再確認や見直しの動きも

 政府が初めて発した南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)により、県内経済は盆休みでにぎわうはずの宿泊施設でキャンセルが出るなどの影響が出た。注意の呼びかけは15日で終わったものの、さまざまな業界で巨大地震と津波への危機感は高まっており、客の避難誘導などの備えを見直す動きも出始めた。

 「書き入れ時なだけに、予約の取り消しが相次いでこたえた」。南海トラフ地震の発生時には津波の浸水想定区域に指定されている佐伯市中心部で、旅館を経営する40代の男性はため息をついた。

 工事関係の職人から観光客まで幅広く受け入れる。日向灘を震源とした地震が8日に起きると、キャンセルが相次いだ。21日までの2割に当たる約20件が取り消され、損失は約20万円に上った。従業員数人の小規模旅館には痛手で「過去のどの地震に比べてもダメージは大きい。前を向いて頑張るしかない」と力を込めた。

 県南に比べて震源から離れた地域では「目立ったキャンセルはなかった」(別府市の大型観光ホテル)など、影響は限定的だったもよう。

 ただ、政府の地震注意で警戒感は強まっている。防災対策の再確認や見直しの動きが広がりつつある。

 ホテルのアマネリゾート(別府市上人ケ浜町)は客室に避難誘導などの案内用紙を置いているが、今後は「宿泊客が自分のスマートフォンでも多言語で確かめられるよう、新たな仕組みを検討する」と担当者。

 由布市湯布院町の素泊まり旅館は「非常食の備蓄を検討する」と話す。

 動きは観光業界に限らない。ホームセンター「ハンズマンわさだ店」(大分市市)では、地震発生から1週間がたった今も、家具の転倒を防ぐ突っ張り棒など一部商品で品薄が続く。

 馬原隆文店長(46)は「需要が予想を超えた。非常時はこの比ではないだろう。ストックを充実できるように努めたい」と話す。

 工場が海に面している造船業の佐伯重工業(佐伯市鶴谷町)は地震発生の翌日、社内各部署と協力会社数十社に、津波がきた場合に備えた避難手順や経路の再確認をメールで促した。

 同社役員は「盆明けにあらためて避難対策について確認し、危機意識を共有する」と述べた。