最後の特攻(8月16日)

AI要約

8月15日、最後の特攻機が大分から飛び立ち、沖縄で攻撃を行った。若き特攻隊員たちの命が奪われた悲劇を描く。

特攻隊戦没者の慰霊顕彰会で、6371人が特攻で戦死し、未来が奪われたことが伝えられる。

戦争の悲劇が続く中、若き命の死に向き合う過去と現在の繋がりが問われる。

 まなこを染めた海は何色だったろう。息をのむような群青か。もはや尋ねることは、かなわない。若い命は果てしない海原に吸い込まれた▼79年前の8月15日。玉音放送が終戦を告げた日の夕刻、特攻機11機が大分から南方へ飛び立った。海軍中将の宇垣纏[まとめ]が率いた「最後の特攻戦」が始まる。いわき市出身、21歳の大木正夫が名を連ねていた。沖縄北部の伊平屋島に至り、攻撃を仕掛けたとされる。宇垣も、大木も散った。出撃した23人のうち、帰還できたのはわずか5人だった▼大木の親族がまとめた「8月15日の特攻隊員」が先ごろ、文庫化された。生き残った隊員は語る。〈急に止まれと言われたって止まれないでしょう。スピードのついた車と同じですよ〉。特攻隊戦没者慰霊顕彰会の集計では、太平洋戦争の特攻で6371人が戦死した。それぞれに家族、友人、最愛の人と切り開く未来があった。終戦後にも殉じた命があると思えば、やるせない▼あの日と変わらぬ夏空に語りかけてみる。憎しみの連鎖は引き返すあてなく、いまだ世界で続いています―。深い群青を悲しげな雲が覆い、雷鳴から怒りの声が聞こえる。遠い日の若き死に、どう向き合う。<2024・8・16>