相次ぐ太陽光発電所の銅線盗難 修理、対策費に悲鳴 被害1億円の事業者も 福島県内 多発想定外、保険に影響

AI要約

北関東を中心に太陽光発電所で送電用の銅線ケーブルの盗難が多発している。被害総額や対策費用が増大し、損害保険会社も全額補償できないケースが出ている。

警察庁は金属類の盗難防止のための条例制定を指示し、各地で盗難被害が報告されている。

専門家は、行政や事業者が連携して対策を強化し、安価な代替品の利用を検討すべきだと指摘している。

相次ぐ太陽光発電所の銅線盗難 修理、対策費に悲鳴 被害1億円の事業者も 福島県内 多発想定外、保険に影響

 北関東を中心に太陽光発電所で送電用の銅線ケーブルの盗難が多発し、福島県内でも被害が起きている。県内のある発電所は福島民報社の取材に応じ、3千メートル以上が持ち去られ、設備の修理などに約1億円かかると被害の実態を明かした。発電所は人目に付きにくい場所にある場合が多く、監視カメラ設置などで膨らむ対策費用に悲鳴を上げる。盗難の増加で損害保険会社が全額補償できないケースもある。銅の価格高騰が背景の転売目的とみられ、専門家は「行政や事業者が一体となった対策が急務だ」と指摘する。

■人目少ない

 県内のある太陽光発電所は、住民からフェンスが破損していると連絡を受けた。現場に向かうと、人が通れる大きさに破られていた。太陽光パネルと他の機器をつなぐ銅線ケーブルが無残に切断され、持ち去られていた。県警は後日、外国籍の複数の男を逮捕した。

 管理会社によると、修理代などを含めた被害総額は推定で約1億円。新たな銅線ケーブル代などに約6400万円、発電できなかった分が約4400万円という。損害は保険で補償されるが、監視カメラを増やしたり、巡回警備を強化したりする追加の警備費が生じた。発電所は敷地が広く、山間部などに多いため狙われやすい。担当者は「できるだけ対策を取りたいが、限界がある」と悲痛な声を上げる。

■膨らむ支払い

 盗難の増加で損害保険会社が事業者に被害を全額補償できない事態も起きている。損害保険ジャパン(東京都)によると、2023(令和5)年度の発電所の盗難に関する支払いは5年前の約20倍に膨れ上がった。企業向けの火災保険を適用しているが、担当者は「盗難多発は想定外。支払いが膨らみ、従来の保険を提供し続けるのが難しくなっている」と明かす。

 同社は発電所の立地や警備体制、過去の保険金の支払い状況などを確認し、全額補償できないと提案する場合があるとする。対策のため、銅線ケーブルより安価なアルミケーブルなどの使用を勧めている。

■条例の必要性

 警察庁は盗まれた金属類の買い取りを防ぐ条例制定の検討を福島県など都道府県の警察に指示している。

 全国で今年上半期(1~6月)に認知した盗難被害は4161件。昨年1年間の5361件を大幅に上回るペースだ。このうち約9割が栃木、群馬、茨城、千葉など関東で発生している。県警によると、県内の今年上半期の被害は57件で、昨年1年間は121件だった。外国人集団による犯行が目立つという。

 太陽光発電協会(東京都)の杉本完蔵シニアアドバイザーは、県内は東京電力福島第1原発事故発生後、発電所が増えているとし、「条例制定に早急に取り組むべきだ」と指摘した。