五輪舞台 自転車競技開催の静岡県東部 奉仕の心 レガシーに 地域貢献活動続く

AI要約

小山町の住民が東京五輪・パラリンピックを契機に始めた奉仕活動が続く。町道沿いの花壇の整備や自転車イベントへの参加など、地域への愛着が行動につながっている。

地元開催の五輪を体験した若者や高齢者など、様々な世代が関わり、楽しみながら奉仕活動を続けている。コミュニティの結束を高める取り組みが盛んに行われている。

また、五輪開催時に準備に携わった関係者たちは、大会が地域に与えた影響と共に、レガシーとして誇りに思っている。コロナ禍での困難も乗り越え、地域社会に貢献する活動が継続されている。

五輪舞台 自転車競技開催の静岡県東部 奉仕の心 レガシーに 地域貢献活動続く

 静岡県東部で自転車競技が行われた東京五輪・パラリンピックから3年。大会を契機に始めた奉仕活動を、それぞれの形で継続する住民がいる。「世界的イベントに地元で関われて幸せ」。祭典で強まった地域への愛着とそれに伴う行動は、コロナ禍に見舞われる中で準備に奔走した関係者が追い求めたレガシー(遺産)の一つとなっている。

 ロードレースの舞台になった小山町棚頭の町道沿いの花壇。選手が駆け抜けた2021年と同じようにオレンジや黄色のマリーゴールドが咲き誇っている。

 コースを彩って歓迎の気持ちを伝えようと、町が中心になって荒れ地を整備した。協力した町花の会は大会後も毎年5~6月に花を植えている。田代あつ子会長(76)は「五輪が開かれた痕跡を残し、興奮を思い出す場所になれば」と話す。

 小山高1年の春山詩来さん(15)=御殿場市川島田=は、地元開催の自転車イベントやフードバンク事業に参加するようになった。「五輪を体験する機会は貴重」と母の知英さん(46)に誘われ、パブリックビューイングなどを楽しむ「ライブサイト」の運営に携わったのがきっかけ。「参加者が喜んでくれるとうれしくなり、一緒に楽しめた。もっと人の役に立ちたいと思った」と振り返る。

 沿道の資機材設置や誘導、動物の飛び出し防止などにも住民がボランティアとして関わった。当時小山町花の会会長として花を植え、沿道ボランティアも務めた小見山福江さん(77)は「テレビで見るだけだった五輪を直接見られた。一生忘れない思い出」と喜びをかみしめる。

 近代五輪史上初めて1年延期され、一部競技は観戦自粛が呼びかけられた。開催可否に関する住民の意見も分かれ、市町職員も迷いながら準備を進めた。小山町の準備を統括した町経済産業部の池谷精市専門監は「町民や企業の理解と協力があったから乗り越えられた」と思い起こす。「成功は町の大きな自慢になった。小山町で大会を開催してよかった」

■「英語で外国人に安心を」決意今も

 「英語を勉強して外国人と話したい」。6年前、東京五輪自転車競技の舞台になると決まった小山町で決意した中学生は、医療機関に勤める現在も同じ気持ちを抱く。「英語を話して異国で入院する外国人を安心させる」。祭典をきっかけに芽生えた情熱は燃え続けている。

 丸田沙羅さん(21)=同町用沢=。御殿場市の病院の入院患者専用病棟で書類作成や面会者の対応にいそしむ。

 町立北郷中の2年生だった2018年2月。バレーボール部の練習後、地元で五輪開催が決まった感想を新聞記者に聞かれた。親しい友人に比べて習得が遅れていたためか「英語…」が口を突いた。「深く考えていなかったかもしれない」と振り返る。

 言葉は熱意を生み行動につながった。中学時代は他の主要教科の1・5倍、高校でも最も時間を割いた。高校時代にけがで入院した病院で優しく接してくれた職員に憧れ「患者と医師・看護師をつなぐ役割を果たしたい」と進路を決めた。専門学校で2年間学び、今年4月から医療事務職員として現場に立つ。

 一度だけ巡ってきた外国人患者との対話の機会は翻訳アプリに頼った。「英語を話せたらかっこいい」。今は日々の業務に慣れるのに必死だが、余裕ができたら英語の勉強を再開する。