【東京都知事選】既成政党 真価問われる(7月9日)

AI要約

東京都知事選では、無党派層の潜在力が顕著に現れ、既成政党の潮目を感じさせた。

現職の小池百合子氏が3選を果たし、自民党などからの支援を受けながらも政党色を薄める選挙活動を展開した。

前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は無党派層や若年層の支持を受け、一定の票を獲得した。無党派層や若年層の動向が今後の政治に影響を与える可能性がある。

 今回の東京都知事選は、既成政党の潮目を感じさせた一方、無党派層の潜在力が印象に残った。立候補や表現の自由を軽んじる言動がまかり通る異様な事態には暗然とした。選挙が劣化したとの指摘は、政党や政治の責任だけではないはずだ。選挙離れ、政治離れが叫ばれて久しい有権者の意識も問われると、改めて胸に刻みたい。

 現職の小池百合子氏は自民、公明両党と都民ファーストの会の支援、国民民主党都連の支持を得て3選された。自民党派閥の裏金問題を受け、選挙戦は政党色を薄めるよう腐心したという。

 自民党は、先の衆院3補選での全敗や静岡県知事選での敗退を踏まえ、立憲民主党との首都決戦は負けられないとの思惑があったとされる。ただ、都議補選での2勝6敗の結果は、次期衆院選への大きな打撃となった。

 全国注視の都知事選は形の上では勝利を収め、足元の都議補選は依然、逆風にさらされ苦心する。党勢回復への足場が固まらない、ちぐはぐな構図が浮かぶ。裏金事件と政治資金規正法改正を巡る党への根深い不信感を払拭せずとも、党の地力で打ち勝てるといった政権党の緩みを思わずにはいられない。今回、敏感に反応したのが無党派層と言えるだろう。

 前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は無所属で臨み、165万8千票余りを獲得した。小池氏とは126万票近くの開きはあるものの、立憲民主党を離党して立候補した蓮舫氏に37万5千票余りの差をつけた。共同通信社の出口調査によると、無党派層の投票先は石丸氏が37%で、小池氏の30%を上回る。蓮舫氏は16%にとどまった。さらに10代、20代の半数近くは石丸氏に投じていた。

 近年の選挙での投票率の低下は、無党派層の広がりや若年層の無関心も要因とされる。石丸氏は交流サイト(SNS)を駆使した戦略が奏功した面はあるとはいえ、政党の枠を超え、無党派層や若年層の受け皿になぜ、なれたのか。既成政党や政治への閉塞[へいそく]感を打開する契機にするためにも、各党は旧来の姿勢を真剣に検証するよう求めたい。それを疎かにして来る自民党総裁選や立憲民主党代表選、次期衆院選への有権者の期待は得られまい。(五十嵐稔)