足を運んでみませんか(7月5日)

AI要約

神戸の海沿いに建つ防災学習施設「人と防災未来センター」が、阪神大震災の教訓を伝える役割を果たしている。

施設内では、87歳のボランティアスタッフが簡易トイレの作り方を教えるなど熱心に活動しており、訪れる人々に震災の記憶を伝えている。

県は震災と原発事故の語り部を海外に派遣し、フランスで被災経験や復興の歩みを伝える取り組みを行っている。

 その建物は港町・神戸の海沿いに立つ。防災学習施設「人と防災未来センター」は阪神大震災の教訓を伝える。現地はかつて工業地帯だった。震災後の再開発を経て、病院や美術館が並ぶ。整った風景から、29年前の災禍を感じ取るのは難しい▼「ここに座ってみませんか」。館内を巡っていると、防災・減災の階で一人の男性スタッフに呼び止められた。厚紙を円形に切り抜き、ごみ箱にかぶせる。簡易トイレの作り方を教えてくれた。御年87歳。2002(平成14)年の開館時から、運営ボランティアを続けているという▼市内にあった自宅が大きな揺れで倒れ、炎に包まれた。家族のため、ローンを組んで家を建て直した。自身の半生を切々と明かす。別れ際には「少しでも多くを学んで帰ってほしい」とも。熱意は、大勢の来館者の心に刻まれてきたのだろう。以心伝心の言葉もある▼県は9月、震災と原発事故の語り部を海外に初めて派遣する。原子力災害への関心が高いフランスで、被災経験や復興の歩み、浜通りの現状を紹介する。伝えてほしい。人の息遣いを。あの日からの、いろんな思いのこもった肉声で。「フクシマへ足を運んでみませんか」―。<2024・7・5>