太宰治の自筆原稿発見

AI要約

青森県五所川原市出身の作家太宰治が疎開中に故郷で書いた短編小説「雀」の自筆原稿が見つかり、三鷹市が購入する予定。原稿は状態良好で、太宰の思いが垣間見える作品である。

原稿は38枚にわたり、太宰の筆跡や消し跡が確認され、太宰研究に貢献する資料として注目されている。

三鷹市は購入費880万円を盛り込んだ補正予算案を可決し、原稿は展示室で公開される予定。太宰が充実した時期を過ごした三鷹が研究の拠点となることが期待されている。

太宰治の自筆原稿発見

 青森県五所川原市(旧金木町)出身の作家太宰治(1909~48年)が、疎開中に故郷で書いた短編小説「雀(すずめ)」の自筆原稿が見つかった。東京都内の古書店が保管していたもので、状態が良く、ページの欠損もないという。原稿は、太宰が晩年暮らし、常設の展示室がある東京都三鷹市が購入する予定だ。

 短編「雀」は、太宰が妻子を連れて金木に疎開していた最中の46年1月に書き上げ、同年10月の文芸雑誌「思潮」に掲載された。戦地から戻った同級生と再会し、酒の席で不思議な告白を聞く-との内容で、戦争に対する太宰の思いも垣間見える作品だ。

 三鷹にある太宰治文学サロン、太宰治展示室で文芸企画員・学芸員を務める吉永麻美さんによると、原稿は200字詰めの用紙に書かれた38枚。冒頭に「雀」「太宰治」と大きめの字で記され、古書店によって和とじされていた。

 4月に「雀」の原稿が古書店にあるとの情報が寄せられ、吉永さんが現物を確認した。太宰の筆跡であり、削除する箇所を囲んで編み目のように消す独特の抹消跡もあったという。

 吉永さんは「創作の様子がうかがい知れる、とても面白い資料」と説明。自筆原稿の大半は日本近代文学館(東京)に寄贈されており、三鷹には小説原稿の所蔵はなかったため「これほどまともな状態で、今の時代になって入手できるチャンスが巡ってくるとは、胸が躍りました」と驚く。

 古書店が原稿を入手した経緯は不明だが、店主が「公的な機関にあるのが望ましい」として購入の申し出に応じたという。28日には三鷹市議会で購入費880万円を盛り込んだ補正予算案が可決された。市は契約手続きを進めて、7月中にも購入したい考えだ。

 原稿は展示室の企画展などで公開する。吉永さんは太宰研究に資する活用方法も検討したいとし、「三鷹は、太宰が晩年の充実した時期を過ごした場所で、140超ある作品のうち80作品以上を創作した。学生や研究者が集まる拠点の一つになってくれれば」と話した。