涼しいはずの北海道も熱中症対策 企業本腰 扇風機付き作業着、飲料配布… 猛暑の23年は労災認定最多

AI要約

夏の暑さが厳しさを増す中、道内でも熱中症対策に力を入れる企業が増加している。昨年、過去最多の熱中症患者が出たこともあり、気象庁は今年も平年より暑い夏を予測している。

一部企業では、炎が燃える熱処理工場や土木工事現場などでスポットクーラーや小型扇風機付きの作業着などの導入が進んでいる。それにより、労働環境の改善や熱中症リスクの意識向上が図られている。

昨年の記録的な猛暑により、道内で熱中症患者が急増し、産業別でも建設業や製造業などで多くの被害が出た。これを受けて、企業が熱中症を警戒する動きが活発化している。

涼しいはずの北海道も熱中症対策 企業本腰 扇風機付き作業着、飲料配布… 猛暑の23年は労災認定最多

 夏の暑さが年々厳しくなる中、道内でも冷房設備の導入など熱中症対策に本腰を入れる企業が増えている。道内は記録的な猛暑に見舞われた昨年、熱中症による労災が過去最多の153人となった。屋外で作業していた1次産業従事者の熱中症による救急搬送件数も最多の141人に上った。気象庁は今夏も平年以上の暑さを予想しており、専門家は早期の備えを呼び掛けている。

 札幌市東区にある池田熱処理工業の工場。炎がめらめらと燃える「熱処理炉」の近くで、移動式の「スポットクーラー」が作業中の社員に向けて冷風を流していた。

 鉄製の部品を800度以上の高温で熱するため、夏場の暑い時期は室温が40度近くに上昇する。現場の要望で、同社は3年前にスポットクーラーを導入し、約20台が稼働する。社員の佐貫基幸さんは「快適になった」と笑顔。高嶋一広取締役は「人手確保のためにも、働く環境を改善していく」と話す。

 土木工事の現場でも対策が進む。伊藤組土建(札幌)は5年ほど前から、協力会社も含めて現場で働く人に、小型扇風機付きの作業着や、臓器などの「深部体温」の上昇を知らせる腕時計型測定器を支給。2年前からは現場の大型モニターに気温や湿度に基づく「暑さ指数」を表示し、熱中症リスクを意識できるようにした。今井一晶工事課長は「暑さがやわらぐ9月末まで、特に注意したい」と気を引き締める。

 この夏から対策を強化する企業もある。工場設備の運用を手がける王子エンジニアリング(東京)の苫小牧事業部は細かな氷と液体が混ざった飲料「アイススラリー」を千袋以上購入し、社員に配る。乳業大手明治(同)の恵庭工場では、工場内でも特に暑くなる受乳場に送風機を置く。

 企業が熱中症を警戒する背景には、昨夏の記録的な猛暑もある。札幌管区気象台によると、道内は昨年、最高気温が30度以上となる「真夏日」が7月20日から9月1日まで44日間も続いた。

 気温上昇に伴い熱中症患者も急増。北海道労働局によると、道内では熱中症による「労災」が近年目立っており、昨年は前年比約5倍の153人に達した。そのうち62人は4日以上仕事を休み、死者も1人いた。発生時期は7~8月が全体の8割以上を占めた。業種別では建設業が48人で最も多く、製造業が21人で続いた。「作業中に頭痛が激しくなった」(製造業60代)、「資材運搬中にけいれんや嘔吐(おうと)の症状が出た」(建設業20代)といった例があった。