【霞む最終処分】(50)第9部 高レベル放射性廃棄物 玄海町㊦ 廃棄物処分 日本の問題 「国が議論リードを」

AI要約

九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町で、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の第1段階「文献調査」が始まった。

町内の住民や行政が調査に対する複雑な思いを抱きつつ、地元への影響や安全性の懸念が広がっている。

経産省と町のやり取り、科学的特性マップに基づく調査の背景など、処分場選定に関わる重要な動きが進行中。

【霞む最終処分】(50)第9部 高レベル放射性廃棄物 玄海町㊦ 廃棄物処分 日本の問題 「国が議論リードを」

 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町を対象とした、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の第1段階「文献調査」は10日、始まった。

 調査を巡る動きが表面化したのは4月15日だ。旅館組合など町内3団体が町議会に出した、調査への応募を求める請願が町議会の原子力対策特別委に付託された。請願は26日の本会議で賛成多数で採択された。

 5月に入ると、経済産業省は幹部を町に送り、調査を申し入れた。7日には町長・脇山伸太郎と経産相・斎藤健の会談が組まれた。斎藤は「調査は処分場選定に直結しない」と強調。調査に否定的だった脇山は会談後、持論と議会の判断との「板挟み」になったと胸中を明かし、5月10日に「住民の代表である議会の採択は重い」と調査に応じる考えを示した。

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 高レベル放射性廃棄物を生む原発の立地自治体として、全国的な議論喚起を目指し調査を受け入れた玄海町だが、最終処分場の候補地となる可能性があることに複雑な思いを抱く住民もいる。脇山の表明から10日余りが過ぎた5月下旬。漁港で漁の準備をしていた男性(67)は「町民は何らかの形で原発の恩恵を受けてきた。反対とは言いづらい」と声を潜めた。交付金などによる地域振興を期待する一方、「余計な施設は持ってきてほしくない」と本音ものぞかせた。

 経産省は2017(平成29)年、全国を最終処分場の適地と不適地に色分けする「科学的特性マップ」を公表。玄海町に関しては地下全域に炭田が広がり、将来的に採掘する可能性がある不適地としていた。国は町への申し入れに先立ち、原子力発電環境整備機構(NUMO)に地層の再確認を依頼した。

 NUMOは、マップには石炭など鉱物が存在し得る範囲を広く示したとした上で「(玄海町には)炭田の存在が確認されていない範囲もある」との報告書を作成。経産省は「調査の実施見込みあり」と判断して申し入れに踏み切った。

 一度は不適地とされながらも調査が始まった点について、請願の採決で反対した町議の宮崎吉輝はマップ自体の形骸化を指摘する。最終処分場は地下300メートルより深い岩盤に、6~10平方キロの範囲で整備される。宮崎は町面積が約36平方キロであるとして「多くの住民が暮らす真下に処分場が広がることになる」と安全性への懸念を口にする。