核ごみ特性マップ形骸化 玄海町全域「不適地」でも調査 科学的観点ないがしろ

AI要約

原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設地としての適性を色分けした国の科学的特性マップが形骸化している。

寿都町や神恵内村と異なり、文献調査によって佐賀県玄海町が不適地と評価されているものの、国が調査実施を求めている現状が示されている。

科学的根拠に基づく地層処分の適地選定が重要であり、専門家からは科学的安全性が保証されない点に警鐘が鳴らされている。

核ごみ特性マップ形骸化 玄海町全域「不適地」でも調査 科学的観点ないがしろ

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場建設地としての適性を色分けした国の科学的特性マップが形骸化している。後志管内寿都、神恵内両町村に続き第1段階の文献調査が実施される佐賀県玄海町は全域が不適地だが、国は調査実施を申し入れた。後世に影響が残る地層処分で科学的観点がないがしろにされる現状に、専門家からは

「今のやり方で科学的に安全な場所が選ばれる保証はない」と警鐘を鳴らす。

 2017年に公表されたマップは、火山から半径15キロ圏内や活断層周辺のほか、炭田など鉱物資源が存在し、将来掘削の可能性がある場所を不適地に区分。輸送に有利な海岸から約20キロ以内を中心に適地を示している。

 マップでは、神恵内村は南端を除き火山の影響がある不適地と示され、文献調査報告書案も同じ評価だった。一方、寿都町はマップ上、活断層・黒松内低地断層帯を構成する断層などは不適地とされたが、報告書案では全域が第2段階の概要調査が可能と判断された。

 寿都町の評価について、5月に行われた経済産業省の地層処分技術作業部会では、専門家から「適切ではない可能性が想定される箇所は概要調査に先送りせず、切り捨てるのが望ましい」との意見書が出された。しかし、原子力発電環境整備機構(NUMO)は不適地に該当する知見が少ないことなどを理由に概要調査は可能との主張を維持した。

 月内にも調査が始まる玄海町について、マップは町内全域の地下に石炭などの鉱物資源があるため不適地と評価。ただ、経産省は「鉱物資源が実際に全域で確認されているわけではなく、適性の判断は文献調査をしないと分からない」とする。このため、寿都町同様、マップで不適地の場所でも概要調査の対象とする可能性は否定できない。

 一方、玄海町の脇山伸太郎町長はマップの情報や町内の狭さを根拠に「処分場を造るのは難しい」と強調し、現段階でも処分場誘致に反対し、概要調査にも反対する意向を示唆している。

 科学的知見、選定制度のいずれから見ても、現時点で同町が処分地となる可能性は低い。それでも国が調査実施に踏み切ったのは、調査実績を積み重ねて、核のごみ問題の進展をアピールし、原発活用を推進する狙いとみられる。ただ、強い放射能を持つ核のごみは無害化するまで10万年かかるとされ、地層処分の適地選定は科学的根拠に基づき、極めて慎重な判断が求められる。