輪島朝市、公費解体を開始 「滅失」の264棟、再建へ一歩 「止まった時、動きだした」 

AI要約

輪島市は5日、能登半島地震による大規模火災で焼け落ちた輪島朝市周辺で建物の公費解体が始まり、朝市再建への希望が湧いてきた。

解体作業が進む中、朝市組合員や地元住民たちは再建への意欲を示し、復興への一歩を踏み出している。

この地域全体の解体手続きが完了し、母親の自宅の片付けに来た地元住民も復興のスタートを感じつつ、活気ある輪島の復活を期待している。

輪島朝市、公費解体を開始 「滅失」の264棟、再建へ一歩 「止まった時、動きだした」 

 輪島市は5日、能登半島地震による大規模火災で焼け落ちた輪島朝市周辺で建物の公費解体を開始した。オレンジ色の露店が連なった朝市通りから威勢のいい「買(こ)うてくだー」の掛け声が聞かれなくなって5カ月余、建物を取り壊す重機の音が鳴り響き、作業を見守る朝市組合員は「元日から止まっていた時が動きだした。希望が湧いてくる」と、一日も早い商いの再開へ気持ちを新たにした。

 午前8時40分ごろ、重機によりがれきの撤去が始まった。冨水長毅(とみずながたけ)組合長(55)は「5カ月間、この景色が変わらずつらい思いをしてきた。朝市の再建へ大きな一歩だ」と語った。

 朝市通りで中華料理店「香華園」を切り盛りした板谷吉生(よしお)さん(48)は「時計の針が動いた。いつまでも下を向いてはいられない」と口元を引き締めた。

 店舗兼工場が全焼した和菓子店「饅頭処(まんじゅうどころ)つかもと」の塚本民子さん(73)は重機音を聞き「元気が出てくる。重機を運転できれば手伝いたいくらい。さあ、始まっぞ」と意気込んだ。

 法務局の職権で、周辺の264棟が「滅失」したとする登記手続きが完了。所有者全員の同意がなくても、災害廃棄物として解体可能になった。公費解体の申請は100棟以上で、市は申請のあった建物から順次、解体に取り組む。

 母親の自宅の片付けに訪れた七尾市の輪瀬浩喜さん(48)は「ようやくスタートしたという気持ちだ。朝市は輪島のシンボル。時間はかかるだろうが、活気ある輪島を取り戻してほしい」と期待を込めた。

  ●市長「復興につなぐ」

 坂口茂輪島市長は5日、北國新聞社の取材に「輪島朝市は震災の象徴的な場所であり、できるだけ早く解体撤去を進め、復興につなげたい」と話した。

 消防庁が先月まとめた報告書では、消失面積は約4万9千平方メートル。屋内の電気配線が地震で傷つきショートするなどし、火の粉が舞い上がって「飛び火」して拡大した可能性が指摘された。