圧倒的に成長しているグミ市場。逆転された飴やガム、若い世代は本当に関心がないのか?

AI要約

20世紀のロングセラー菓子が相次いで姿を消し、若い世代に人気のグミが台頭している背景には時代の変化がある。

昭和育ちの世代が消えつつあり、20世紀の味覚が時代遅れとされる中、グミが新たなトレンドとなっている。

要因として、飴やガムに対するニーズの変化、コロナ禍における食習慣の変化などが挙げられる。

圧倒的に成長しているグミ市場。逆転された飴やガム、若い世代は本当に関心がないのか?

【あの食トレンドを深掘り!】90年代に流行した「ティラミス」、数年前に話題になった「おにぎらず」、直近では社会現象にもなった「タピオカ」など、日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。

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2月末にチェルシーの生産が終了し、昨年1月末にはサクマ式ドロップスの佐久間製菓が廃業、昨年3月末には明治がガム事業から撤退した。小腹をちょっと満たす、あるいは口さみしさを抑えるなどの目的で食べる菓子が次々と消えている。もしかすると、菓子の世界で世代交代が起きているのか。

何しろ、どの菓子も手に入らなくなることを残念がるのは主に、昭和育ち。挙げたのはどれも、20世紀誕生のロングセラーである。サクマ式ドロップは、アニメ映画『火垂るの墓』にも登場した歴史があり、発売はなんと、明治時代の1908年で国産初のドロップだった。チューインガムの製造が始まったのはGHQの占領下で、チョコレートと共に兵士が配っていたことを、当時を描くドラマなどで知った人も多いだろう。ガムのシェアNo.1のロッテが、ガムの製造で事業を始めたのは1948年である。チェルシーは、明治が1971年に発売。

そして今、若い世代を中心に圧倒的に人気が高いのはグミだ。スーパーでも、コンビニでも、グミは目立つ一角にズラッと並んでいる。グミを日本で最初に生産したのは明治で、1980年発売のコーラアップで、バラエティが豊かになったのは1990年代以降だ。誕生時期を比べれば、明らかに時代が違う。もしかすると、昭和世代の味覚は古いのか? なくなったどの菓子にも親しんできた昭和世代の私としては、自分が「前世紀の遺物」になるのは捨ておけないので、この現象の背景を改めて分析してみたい。

明治のガム撤退時と、チェルシー終売発表時には、各メディアが時代の変化と報じている。飴は長時間舐めていなければならないので飽きる、とタイパを重視する世代から敬遠される。ガムはマスクをつけていると食べにくく、口臭を気にしなくて済むので、コロナ禍で口にする必要性が減った。挙げられた要因の一つ一つは、「そうかもしれない」と思わせる説得力はあった。