低血圧で「認知症」に...「低血圧に治療の必要はない」のに「カラダは危険」なワケ

AI要約

血圧の低い方、つまり「低血圧」について、日本の基準値やWHOの定義、症状、治療の必要性について解説されている。

日本では低血圧は病気として扱われておらず、日本高血圧学会の基準値にも「低血圧」という言葉は出てこない。

低血圧の症状はめまいや立ちくらみなどであり、治療は食事や生活習慣の改善が中心となる。

低血圧で「認知症」に...「低血圧に治療の必要はない」のに「カラダは危険」なワケ

 毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。

 BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。

 『健診結果の読み方』連載第7回

 『血圧が130を超えると「大問題」!? …テレビCMに踊らされる日本人に隠された「本当の基準値」とは』より続く

 血圧というと高血圧ばかりに注意が向けられていますが、低いほう、つまり「低血圧」はどうなっているのでしょう。

 健診における低血圧の基準値はありません。日本高血圧学会の基準でも、上120未満、下80未満を満たせば、どれだけ低くても「正常血圧」と判定されてしまいます。とはいえ上が80以下になったら、お医者さんもかなり慌てると思います。心臓が止まりかけているかもしれないので。

 「診察室血圧」は病院で計る血圧、「家庭血圧」は家で計る血圧です。大抵のひとは、病院では少し緊張するため、上の血圧が10~20、ひとによっては30以上も高くなります。

 そのため最近は、家庭血圧のほうが重視されるようになってきています。血圧が気になるひとは、家庭用血圧計を買って、家で毎日計って記録をつけておくべきです。それを医者に持っていって、相談すればいいでしょう。

 それはともかく、日本高血圧学会が決めた血圧の基準値のなかにも「低血圧」という言葉は一切出てきません。また日本「高血圧」学会は存在しますが、日本「低血圧」学会はありません。つまり日本では、低血圧は病気として扱われていないということです。

 ただし世界保健機関(WHO)の定義があります。上100以下、下60以下の状態が継続しているものを、低血圧としています。日本でもこれに準じて診断している医師が大勢いるので、健診の最後に行われる「内科診察(医師による診察)」で「低血圧」と判断され、その旨が健診結果に記載されることがあります。

 低血圧の主な症状は、めまい、立ちくらみ、朝起きられない、などです。しかし命にかかわることはなく、しかも動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞などのリスクが低いこともあって、「低血圧は治療の必要がない」とする医師が少なくありません。また治療といっても、食事や生活習慣の改善指導が中心になります。

 低血圧に悩むひとがどのくらいいるかは、よく分かっていませんが、人口の約1~2パーセントとする説があります。人数で言えば、125万人から250万人といったところです。また男性よりも女性のほうが多く、男女比は1:2とされています。