福井県敦賀市を断ち切る「2つの断層」とは…北陸新幹線延伸計画はどうなる?(重道武司)

AI要約

北陸新幹線の敦賀駅での途切れと原子力発電所の再稼働の問題による2つの断層についての記事。

新幹線延伸計画の高額建設費と長期工期、原子力発電所の再稼働によるリスクについて述べられている。

再稼働が不可能となった場合、原電は収入がゼロとなり、廃炉費用の重荷など敦賀地域の将来が不透明である。

福井県敦賀市を断ち切る「2つの断層」とは…北陸新幹線延伸計画はどうなる?(重道武司)

【経済ニュースの核心】

「この街には今2つの断層が折り重なっている」。市関係者の一人はこう嘆息する。

 福井県敦賀市──。JR東京駅から富山、金沢を経て西進してきた北陸新幹線の鉄路はここ敦賀で断ち切られる。これが1つ目の断層だ。

 無論、在来線とは接続している。ただ観光振興の要とされる「回遊性」を踏まえれば、そのインフラを担うべき新幹線が途中で「寸断」されているような現状は「憂うる事態」(地元財界筋)だろう。首都直下地震など有事における東海道新幹線の代替動脈確保など国家・経済安全保障の面からも無視できないリスクだ。

 そして2つ目は本物の断層だ。敦賀原子力発電所2号機の北側300メートルにある「K断層」から原子炉建屋の真下に潜む地層の割れ目へと連なる断層で、原子力規制委員会はこれを「活断層である疑いを否定できない」と判断。原発を運営する日本原子力発電(原電)が求めていた再稼働に対して先週、「不合格」の決定を下した。

 北陸新幹線の延伸計画はある。敦賀からひとまず同県の小浜市まで延長。そこから南下させ、京都を経て新大阪に至るルートで、JR桂川駅の地下に新(京都)駅を設置するプランを含め3案が俎上に上がっている。

 ところが国土交通省が8月中旬に与党のプロジェクトチーム(PT)に示した試算では16年度時点で2.1兆円としてきた建設費が物価上昇持続を加味した最大で2.5倍超の5.3兆円にも跳ね上がった。しかも従来15年としてきた工期は最長で28年になるという。PTではとりあえず25年度着工を目指すことで了承したものの、実現できたとしても全面開業は2050年以降。道筋は「はるか彼方にかすむ」(政府筋)。

 もう一つの断層がもたらす影響も甚大だ。「不合格」を受けて原電では再稼働の再申請に踏み切る構えだが、審査には数年かかるうえ、「(再申請しても)結論は変わらない」(規制委関係者)との見方が有力。「廃炉」が一気に現実味を帯びる。

 そうなれば再稼働を前提に原電が関西電力など電力大手3社から受け取っている電力供給契約に基づく基本料金収入はゼロとなる。敦賀原発だけでなく、会社の存続すら危うくなってこよう。716億円と目される廃炉費用も重荷だ。敦賀を覆う霧はしばらく晴れそうにない。

(重道武司/経済ジャーナリスト)