マグマ膨張で下り坂が上り坂に、火山噴火遺構で大地のすさまじい力を実感 北海道・有珠山

AI要約

北海道南部の活火山、有珠山の噴火による被害を活かして洞爺湖有珠山ジオパークが設立され、減災教育や観光に活用されている。

洞爺湖有珠山ジオパーク内の金毘羅火口災害遺構散策路では、火山噴火の痕跡がそのまま残され、地元のガイドが解説を行っている。

火山災害の遺構を利活用し、減災意識の普及や観光に活かす取り組みが進んでいる。

マグマ膨張で下り坂が上り坂に、火山噴火遺構で大地のすさまじい力を実感 北海道・有珠山

20年から50年おきに噴火を繰り返している北海道南部の活火山、有珠山。噴火口がある洞爺湖温泉周辺では、24年前に起きた噴火の被害エリアをそのまま「洞爺湖有珠山ジオパーク」として残し、減災教育や観光に活用する動きが進む。地元団体が今年度、試験的に導入した立ち入り規制区域を散策する「アドベンチャートラベル」のツアーは参加者から大好評で、運営団体は来年度の本格導入を目指している。

■大地のうねり

洞爺湖温泉街の観光情報センター内にあるジオパーク推進協議会。その事務所から車でわずか5分の場所に「金毘羅火口災害遺構散策路」の入り口がある。普段は決められたルート以外の立ち入りは制限されているが、この日はガイドの同行を前提に特別許可を得て遺構内部を歩かせてもらった。

案内役を務めてくれたのは、洞爺湖有珠山火山マイスターの佐々木美穂子さん(47)。噴火前は普通の生活道路だったという場所に立ち、「ここは下り坂だったけど、地下のマグマが膨張し地面が最大70メートルほど隆起し、緩やかな上り坂に変わってしまった。大地のすさまじいパワーを実感する」などと解説する。

道路はアスファルト部分が階段状に損壊し、道路標識や電柱、ガードレールは大量の火山灰で埋まっている。生い茂った雑草をかき分ける獣道のようなルートをさらに進むと、まだ蒸気が噴出している噴火口や、地面が傾いて住めなくなった住宅、寺院など噴火当時の状況がそのまま残されていた。

同協議会の加賀谷にれ次長(49)によると、建物などの施設を遺構にするケースは多いが、「これだけ広い被災エリア全体の遺構は世界的にも珍しい」という。修学旅行生や外国人観光客などのガイドにも携わる佐々木さんは「火山噴火の跡を実際に見てもらい、万が一、自分たちのまちで災害が起きたらどうなるかを考えるきっかけになれば」と減災意識の醸成に力を入れる。

■噴火遺構を利活用

全国には110の活火山があり、北海道ではこのうち20の火山が今も活動している。有珠山は20~50年おきに噴火を繰り返している。直近の噴火は平成12年。札幌市出身の記者は幼少期のころ、昭和52年噴火を経験した。当時は約60キロ離れた札幌の住宅街に火山灰が降り、道路や車に堆積した。大量の砂をかぶり、じゃりじゃりとした頭を何度も洗った記憶がある。