女性に多い“隠れ”睡眠時無呼吸症候群に要注意!「肥満」「激しいいびき」の典型例とは異なる

AI要約

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、女性にも多く見られる病気であり、適切な診断や治療が必要です。

女性のSASは典型例と異なり、診断が難しく、医師側の認識も問題とされています。

症状としていびき、頭痛、眠気などがあり、CPAP療法が主な治療法として使われます。

女性に多い“隠れ”睡眠時無呼吸症候群に要注意!「肥満」「激しいいびき」の典型例とは異なる

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)といえば、中年以降の太った男性に多い病気というイメージを持っていないだろうか。

「『太った男性』は確かにSAS患者の典型例ではあるのですが、痩せている人、小顔の人にも多い。そして、世界的にも最近問題視されているのが、女性のSASです」

 こう指摘するのは、「くわみず病院」(熊本市)の池上あずさ院長。女性のSASは正しく診断されていない人も珍しくなく、「隠れSAS」と池上院長は呼ぶ。

 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする状態(無呼吸・低呼吸)を繰り返し、体の低酸素状態が発生する病気だ。肥満、小さい顎、舌の根元が落ち込む舌根沈下や扁桃肥大などによる上気道の狭窄が原因になるといわれている。

 睡眠中に呼吸が止まる・浅くなることで眠りの質が悪くなり、日中の眠気や体のだるさなどが生じ、QOL(生活の質)が低下する。

 低酸素状態や無呼吸・低呼吸に対する脳からの覚醒反応で交感神経系が強く働くと心拍数が増え、血圧が上昇。その結果、血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞といった心血管障害の発症リスクが高くなる。SASがあると心筋梗塞は3倍、脳梗塞は4倍リスクが増すとの報告もある。

「女性をはじめとする『隠れSAS』の人たちは、SASを放置していることで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを抱えたままなのです。速やかに適切な治療に結びつける必要があります」(池上院長=以下同)

 女性のSASが“隠れ”となってしまうのは、SASの典型例、つまり「太っている」「就寝中大いびきをかき、突然呼吸が止まり、しばらくすると大いびきを再開」が見られないことがほとんどだからだ。

「女性ホルモンには呼吸をスムーズにしたり、代償する働きがあり、よほど肥満でない限り、更年期までは女性はSASになりにくい。ところが更年期以降、女性ホルモンの分泌の急激な減少で、睡眠中の呼吸に影響が生じる。無呼吸とまではいかなくとも、気流制限や呼吸が浅い低呼吸を起こします。さらに、女性では、男性ではあまり反応しない程度の気流制限でも脳が反応し、中途覚醒となったり、自律神経の異常が生じやすい」

■重症度は低いのに心筋梗塞リスクは高い

 SASの重症度は一般的には「無呼吸低呼吸指数(AHI)」で示される。呼吸が止まったり、浅くなったりする回数が1時間にどれくらいあるかを示すもので、AHIが5以上でSASと診断され、5~15が軽症、15~30が中等症、30以上が重症とされている。

「ところが女性のSASではAHIで見る重症度と、実際の症状や日中の眠気などQOLの低下とは一致しないことがよくあります。そして女性によく見られる気流制限くらいでは、無呼吸や低呼吸が起こっていないのでAHIではカウントされず、SASの診断には至らない。しかし、症状はあるのでつらい。心筋梗塞や脳卒中のリスクも高く、男女の比較試験では、AHIは女性の方が明らかに低いものの、心筋梗塞のリスクは高齢女性では、むしろ高かったとの結果が出ています」

 記者の知人は起床時の頭痛がひどく、いびきがあり、何軒ものクリニックを回って、最終的にSASと診断された。

 女性で痩せ形だったため「SASは太った男性の病気。あなたは違う」と何度か言われたそうだ。

「医師側にもSASに対する間違った認識が根強い。更年期学会やプライマリーケア学会、産婦人科学会レベルで女性のSASを広く周知すれば、診断率も上がると思うのですが、現状はまだまだ。診断がつかない場合、SASを専門で診ている睡眠学会認定施設や睡眠外来の専門病院・クリニック(参考URL=https://jssr.jp/list)を受診することをお勧めします」

 SASを疑う症状としては「多少の差はあれ、いびきがある」「起床時の頭痛」「日中の眠気や倦怠感」「中途覚醒」「息苦しくて目が覚める」が挙げられる。

 なお、治療は男性と同様、CPAP療法という空気を送り込む機器を使っての治療が第一選択となる。