「勉強家」「体幹が強い」――ゆかりの作家が語る、舟越桂の姿。彫刻の森美術館のトークショーレポ

AI要約

神奈川・箱根にある彫刻の森美術館本館ギャラリーで開催されている彫刻家、舟越桂の個展『舟越桂 森へ行く日』と、同館アートホールの展示について。また、トークショーで登壇した現代作家5名のコメントも紹介。

『彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選』では、名作彫刻の展示や現代作家の作品が並び、舟越が選出した作家に焦点を当てている。

舟越桂と交流のある5人の現代作家の作品、トークショーでのコメント、三木俊治による舟越の教育者としての一面についても述べられている。

「勉強家」「体幹が強い」――ゆかりの作家が語る、舟越桂の姿。彫刻の森美術館のトークショーレポ

神奈川・箱根にある彫刻の森美術館本館ギャラリーで開催されている彫刻家、舟越桂の個展『舟越桂 森へ行く日』。2024年3月29日、72歳で死去した舟越が、生前に準備を進めてきた展覧会だ。同館アートホールでは『彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選』として、同館が所蔵する作品の数々と、舟越が選出した現代の作家5名(三木俊治、三沢厚彦、杉戸洋、名和晃平、保井智貴)の作品が展示されている。

それぞれ舟越とゆかりがある5人。このほど開かれたトークショーに登壇した三木、三沢、杉戸、保井はそれぞれ、舟越との交流や出展している作品についても語った。

『彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選』は、12月1日まで。トークショーでのコメントを交えてレポートする。

⽇本で初めての野外美術館として1969年に開館した同館。『彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選』では、これまでに収集された2千点に及ぶコレクションから、近・現代彫刻の名作を選び、時代の流れに沿って展⽰。メダルド・ロッソや朝倉文夫、ブランクーシ、ジャコメッティ、舟越保武らの作品が並んでいる。

さらに、本館ギャラリーで開催中の『舟越桂 森へ行く日』の関連として、⾈越桂とゆかりのある現代作家5人の作品を展示。5人は本展のために舟越が選出した作家で、舟越は「みなさんそれぞれに、僕には思いつかない姿や形の作品を提示してきています。それがどんなことから来ているのかが気になる作家です。そんなことを考えて選ばせてもらいました」とコメントを寄せた。

2024年7月末、『舟越桂 森へ行く日』の関係者内覧会に合わせて開かれたトークショーには、三木、三沢、杉戸、保井が登壇。本展で展示された作品の説明だけではなく、舟越とのエピソードについても語り合った。

舟越とは長年の友人であるという三木俊治。本展で展示されているのは『美つくり箱』(2024年)。

三木は「行列」をテーマに複数の作品を制作している。初めてつくったのが1984年だといい、「『行列』は、人間社会のアイコンというか営みというか。いまは僕のアイコンみたいな感じ」と説明。「この作品の『行列』は箱のなかにあるため、本当は所有者しか見れないというふうにしてある」とした。箱の色は五行(※)を表しているのだという。

三木と舟越は、東京造形大学でともに教鞭をとった。教育者としての舟越について、三木はこう振り返った。

「舟越さんは、毎週金曜日の午前中から夜の9時までいました。なんで9時までいるかっていうと、『聞きたいことがあったらいつでも来て』って学生に言ってたから。『コーヒー飲ませてください』から『画廊とどう付き合えばいいですか』『続けることを不安に思ってしまう』『もうできません』まで、美術のカリキュラムに入っていない人まで相談にやってくるんです。僕は『そうか、じゃあインド行け』とか言っちゃうんだけど(笑)舟越さんは相手の話を聞きながら、本人が目標を決めて自分自身で走っていけるように、思いを引き出していた。すごい教育者だな、と思っています」

※「陰陽五行」という中国古代の哲学思想。自然界に存在するあらゆるものを「木、火、土、金、水」の5つに分類し、その5種類の間はお互いに関連していると考える。