腸内細菌が関わる消化器疾患の最新情報を語る/腸内細菌学会市民講座 大草敏史・順天堂大学大学院腸内フローラ研究講座特任教授が講演

AI要約

消化器の病気の原因として腸内細菌が関与している可能性がある。

悪玉菌が増えると腸の防御力が低下し、潰瘍性大腸炎やクローン病のような病気になる可能性がある。

食生活の変化が潰瘍性大腸炎の増加に関連しており、高脂肪食や増粘剤、乳化剤などが「リーキーガット」の原因となることが報告されている。

腸内細菌が関わる消化器疾患の最新情報を語る/腸内細菌学会市民講座 大草敏史・順天堂大学大学院腸内フローラ研究講座特任教授が講演

「原因不明」といわれる消化器の病気に、腸内細菌が関与している可能性があります。大草敏史・順天堂大学大学院腸内フローラ研究講座特任教授が「腸内細菌が関わる消化器疾患の最新情報」と題した講演で、研究がどこまで進んでいるかを説明しました。その抜粋をお届けします。(文と写真=橋本聡)

講演は、6月25日に東京で開かれた第28回腸内細菌学会学術集会で行われました。

 「原因不明の腸炎」といわれる病気があります。「潰瘍(かいよう)性大腸炎」や「クローン病」(注)です。

 最近、その主因が腸内細菌だと考えられるようになっています。患者の腸の粘膜を調べると、たくさんの菌が張り付いていました。さらに、粘膜の中にも菌が侵入していました。これは「悪玉菌」が増えたため、腸の防御力が低下し、病気になったのではないかと考えられます。

 腸内細菌には、人体に良い働きをする「善玉菌」と悪い働きをする「悪玉菌」がいます。「悪玉菌」はいろいろな病気の原因になります。そのようなものが腸から体内に出ていかないように、腸管には防御の仕組み「バリア機能」があります。粘液や免疫のほか、細胞と細胞の間がタイトにきっちり接着されている細胞構造などです。

 このバリアをすりぬけて腸内細菌が漏れ出ることを「リーキーガット(Leaky Gut)」(腸管壁浸漏)といいます。

 私が医者になった1970年代当時は、潰瘍性大腸炎やクローン病といえば、年に1、2例しか診ない珍しい病気でした。ところが今や、全国の患者数は23万人といわれます。これだけ急激に増えた原因は何でしょう。それは日本人の食生活の変化である、と私は考えています。

日本人の食生活は年々、穀類が減り、脂肪が増えてきています。そのペースとだいたい並行するかたちで潰瘍性大腸炎が増えています。脂肪を多くとる高脂肪食は、腸管から腸内細菌が漏れやすくなる透過性を高め、「リーキーガット」をもたらすことがわかっています。

 そのほかにも、アイスクリームやパンによく使われる増粘剤が同じ働きをします。乳化剤、人工甘味料なども「リーキーガット」の原因になります。したがって、これらを食べ過ぎないことが大切です。

 乳酸菌やビフィズス菌は「善玉菌」として有名ですが、幸いなことに、これらはバリア機能を強化することが報告されています。