破産寸前から復調、紆余曲折を経た「ボルサリーノ」の現在地

AI要約

ボルサリーノは、イタリアの老舗帽子メーカーであり、熟練の職人による手作りの中折れ帽やパナマハットが世界的に人気を博す。しかし、経営面では脱税や破産寸前などの困難があったが、現在は復調傾向にあり、日本市場でも再出発を図る。

元オーナーの逮捕やリーマンショック後の業績悪化を経て、ボルサリーノは紆余曲折の道を辿ったが、そのアイコニックな中折れ帽はファッション業界でも支持され続けている。

日本市場では過去には堅調な売上を誇っていたが、オーナー変更やコロナ禍により苦戦を強いられた。中央帽子がブランドの再生に取り組む中、再び日本での展開をスタートする予定だ。

破産寸前から復調、紆余曲折を経た「ボルサリーノ」の現在地

 創業167周年を迎えるイタリアの老舗帽子メーカー「ボルサリーノ(Borsalino)」。熟練の職人の手による50以上の工程を経て完成するフェルト素材の中折れ帽や手編みの麦わら素材のパナマハットで人気を博し、現在も世界中のセレブリティが愛用している。一方で、元オーナー マルコ・マレンコ(Marco Marenco)の脱税と税金詐欺による逮捕や、一時は破産寸前に陥るなど、経営面では紆余曲折を経てきた。そんな同ブランドの業績は、現在復調傾向にあるという。そして、日本市場では、2025年春夏シーズンから日本企画によるライセンス商品の展開を再スタートする。老舗ブランドは、低迷時期からどのように復活を遂げたのか。

 ボルサリーノは、イタリアの高級帽子メーカーとして1857年にジュゼッペ・ボルサリーノが創業。同氏が考案したと言われるアイコニックな形状の中折れ帽は、映画「カサブランカ」(監督:マイケル・カーティス/1942年)のハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンをはじめ多くの映画スターが着用したことなどをきっかけに、世界中で長年人気を博してきた。また、ファッション業界からの支持も厚く、カリフォルニアを拠点とするハットメーカー「ニック・フーケ(Nick Fouquet)」や、「トム フォード(TOM FORD)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「モスキーノ(MOSCHINO)」「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」「マルニ(MARNI)」「ロシャス(ROCHAS)」など、これまで多様なデザイナーやブランドとのコラボレーションを手掛けている。

 しかし、ハットを主力とする同ブランドは、リーマンショック以降の消費低迷とカジュアル化によるハット文化の縮小から、世界的に業績が悪化。2015年の元オーナー マルコ・マレンコ逮捕の後、2016年には投資会社 ヒエレス エクイータ(HAERES EQUITA)がオーナーとなったものの、2017年12月にはブランドの破産手続きを申請、2018年7月にはヒエレス エクイータが640万ユーロで買収し完全子会社化するなど、紆余曲折した道を辿ってきた。

 一方日本では、ヒエレス エクイータがオーナーとなり全ライセンス事業から撤退した2016年までは、世界の動向とは異なり堅調な売上を維持。2016年まで40年以上にわたってボルサリーノのライセンス品製造を手掛け、現在は日本事業を運営する中央帽子の担当者によると、当時の日本ではライセンス品を含めた布帛商品が比較的豊富にあったことが、売上に貢献していたという。なお、ライセンス以外の日本事業については、2007年から2018年までオーロラが本国商品の輸入販売を担った後、2018年にヒエレス エクイータと伊・リヴォンが共同出資で日本法人 ボルサリーノジャパンを設立。その後、イタリア主導での運営に苦戦したことから、2023年3月に中央帽子が日本事業を譲受した。

 中央帽子の担当者は、オーナー変更後のブランドの歩みについて「ラグジュアリーブランドへと舵を切るべく、全ライセンス事業の廃止や売場の選定などを行いリブランディングで再起を図ろうとしていましたが、そのタイミングでコロナ禍が発生。状況はさらに厳しくなりました」と説明。日本に関しても、コロナ禍では同様に苦戦を強いられたという。