「シカはつらいよ」全ページ“シカしかいない”はずが、よ~く見ると…? 大人気絵本作家キューライス氏新作絵本【書評】

AI要約

『シカしかいない』は、シカが溢れる不思議な魅力の絵本作品で、どのページも見入ってしまう。

作者のキューライスさんが描くシカたちは個性豊かで面白いエピソードが満載だ。

子どもと一緒に楽しめる絵本であり、シカしかいないと思わせないユニークな展開も楽しい。

「シカはつらいよ」全ページ“シカしかいない”はずが、よ~く見ると…? 大人気絵本作家キューライス氏新作絵本【書評】

 自然と頬がゆるむ。可愛すぎる。見渡す限りシカだらけ。たったそれだけなのに、見れば見るほど発見があって、どのページにも見入ってしまう。そんな本が、『シカしかいない』(キューライス/白泉社)。タイトルの通り、シカしかいない、不思議な魅力の絵本作品だ。

 作者は、マンガ家、絵本作家、アニメーション作家として大活躍のマルチクリエーター・キューライスさん。X(旧Twitter)フォロワー数は29万超、Instagramは21万超(いずれも2024年8月時点)。これまで絵本作品として「ドン・ウッサ」シリーズ(白泉社)や『ニンジンジン』(白泉社)、マンガ作品では『ネコノヒー』(KADOKAWA)や『スキウサギ』(秋田書店)、『悲熊』(LINE Digital Frontier)と、数多くの作品を生み出してきたが、今回の作品は、「これまで描いた全ての絵本の中で一番描くのがたいへんだった」のだという。どうして大変だったか。それは、本作の各ページに本当にたくさんのシカが登場するためだろう。

 公園、銭湯、レストラン……。この絵本ではどこを見てもシカばかり! シカたちは皆、ぼてっとした体型、愛らしい短足。だが、その一頭一頭はそれぞれかなり個性的で、いろんなシカのいろんな姿に思わずクスッと笑わされてしまうのだ。たとえば、公園にはハチマキを巻いてジョギングをしているぽっちゃりシカがいるし、子どもがブランコや鉄棒で遊ぶのを見守る親シカ、泥まみれになった我が子に困惑する両親シカもいる。噴水が直撃して大笑いしているシカがいれば、巨大なシカ型遊具で滑り台を楽しむシカ、まったり寝転ぶシカも。それぞれのシカに物語が感じられて、見れば見るほど面白い。

「シカさん、メガネかけてる」「ねんねしてる」「にんじん、おいしそう」……。実際に、言葉を覚えたての2歳の子どもと読んでみると、あらゆるシカを指差しながら、楽しそうにページをめくっていた。もう少し成長すれば、「ボールで遊んでいるシカはどこかな?」などと、探し絵みたいにも遊べそうだ。……それにしても本当にシカしかいないのだろうか。と思いながら読み進めていくと、「シカしかいない?」というページも。子どもも「あれ? シカじゃない!」と思わずニコニコ。親子で楽しい読書時間を過ごすことができた。