「高齢者は免許を返納しなくていい」運転をやめた高齢者は要介護リスクが激増…日本人が知らない“免許返納問題”の意外な事実《和田秀樹が解説》

AI要約

和田秀樹氏が高齢者の生き方にスポットを当てた著書からの抜粋。高齢者は重要な消費者であり、免許返納の必要性についても考察。

高齢者の事故率は若者よりも低く、85歳以上の死亡事故は人をはねていない場合がほとんど。理屈通りにはいかないことも考慮すべき。

高齢者の事故率の実態や免許返納について、理屈と現実のずれを示すデータをもとに解説。

「高齢者は免許を返納しなくていい」運転をやめた高齢者は要介護リスクが激増…日本人が知らない“免許返納問題”の意外な事実《和田秀樹が解説》

 高齢者専門の精神科医として、36年間、延べ6000人の患者を診てきた和田秀樹氏。高齢者は重要な消費者で、「日本経済が復活する芽」だと考え、高齢者の生き方にスポットを当てた著書を多数出版している。

 ここでは、そんな和田氏が、高齢者が人生を楽しむためのヒントを綴った新著『 老いるが勝ち! 』(文春新書)より一部を抜粋。和田氏が「高齢者は免許を返納すべきではない」と考える理由とは――。(全2回の1回目/ 2回目に続く )

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 世の中は理屈通りにはいかない。その認識を深めるべきです。

 しかも、理屈だけで終わるわけではありません。理屈通りに物事を進めようとすると、やはり被害者が出てしまうのです。薬だって副作用もありますからね。

 ゼロコロナのときもそう思ったのですが、どんなものにも害はあるわけです。自粛生活や自粛政策にも害がある。ワクチンにも害がある。

 理屈通りにはいかない良い例が、さきほど触れた免許証の返納です。もう少し詳しく考えてみます。

 私の著書『80歳の壁』で、もっとも高齢者に支持されたのは、「高齢者は免許証を返納する必要はない」という件です。

 高齢者の事故の理屈と現実についてお話ししますと、【図表2】をご覧ください。

 2023年の警察庁のデータによれば、高齢者の事故率は、人口10万人当たりで考えた場合でも決して多くはありません。むしろ、10代、20代のほうが多いのが現実です。さすがに75歳を超えるとちょっと増える傾向にはあります。

 85歳以上の運転者が第一当事者である事故に特徴的なのは、他人をはねているのではなくて、車両単独と言って、自分が犠牲になることが多いのです。

 85歳以上の死亡事故は10万人に11.4件で、その18パーセントが人をはねる事故です。つまり、人をはねる死亡事故は、10万人に2件ですから、5万人に1件です。はねていない人が5万人中に49999人いるわけです。