若い世代に急増?!子宮頸がんは早期発見より“予防できる”がん!今すべきこととは?専門医からの提言

AI要約

HPVワクチンと検診を組み合わせることで子宮頸がんの予防が可能であること。

子宮頸がんの発症リスクや影響、早期治療の重要性について。

若い世代に多い子宮頸がんの原因や症状、HPVワクチンの接種について。

若い世代に急増?!子宮頸がんは早期発見より“予防できる”がん!今すべきこととは?専門医からの提言

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンと2年に1回の検診で、子宮頸がんは、ほぼ予防できるようになりました。検診だけでも、ワクチンだけでも、子宮頸がんは予防できません。検診とワクチンを組み合わせることで、子宮頸がんを予防できるのです。ワクチンと検診の組み合わせ方について、産婦人科医の柴田綾子先生に聞きました。

■検診で早期発見できても将来の妊娠・出産に影響が! 

「子宮頸がん検診を受けていれば、HPVワクチンは接種しなくていい」「HPVワクチンを接種したから、検診は受けなくても大丈夫」という声を聞きます。しかし、子宮頸がんを予防するには、ワクチンと検診を組み合わせることが大切です。

「子宮頸がん検診は、がんの早期発見と早期治療を目的に行われるもので、子宮頸がん検診では、がんの発症を防ぐことはできません。子宮頸がんの発症を防ぐには、やはりHPVワクチンを接種することが大切です。しかしながら、子宮頸がんの中には、ワクチンでは防げないウイルスタイプによる子宮頸がんもあります。ですから、ワクチンだけでも不十分で、検診と組み合わせることが必要です。子宮頸がんを予防するには、ワクチンと検診は車の両輪。どちらも大切なのです」と柴田綾子先生。

万が一、子宮頸がんにかかったとしても、子宮頸がん検診で、早期発見すれば子宮は残せて、妊娠・出産も可能と言われています。しかし、将来、早産などのリスクがあることはあまり知られていません。

「検診で子宮頸がんが見つかったら、手術が必要です。超早期発見で、前がん病変(異形成)やごく初期の子宮頸がんで発見できたとしても、細胞の変化した部分を切り取る子宮頸部の円錐切除術を行うことになります。この円錐切除術を行なった場合、将来、妊娠・出産をする際に、早産や流産などが起こる可能性が高まります。また、子宮頸がん検査は100%ではなく、がんや異形成を見逃してしまう可能性もあります。ですからHPVワクチン接種で予防することも大事なのです」と柴田先生。

■子宮頸がんは、なぜ若い世代にかかりやすいの?

がんというと、年配の人の病気というイメージを持っている人が多いと思いますが、子宮頸がんは若い世代の女性に多いがんです。

「子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部にできるがんです。子宮頸がんの原因は、性交渉によってヒトパピローマウイルス(HPV)に持続的に感染することです。HPVは、決して珍しいウイルスではなく、多くの女性と男性が一生に一度は感染するといわれる、ごくありふれたウイルスです。性交渉の経験がある方の80%は、知らないうちにHPVにかかったり、治ったりしています」(柴田先生)

「セックスをたくさんしている人が感染する」「特定のパートナーとだけ性交渉をするので感染しない」ということはありません。過去に一度でも性交渉の経験がある人ならば、誰もが感染するリスクがあります。たとえひとりの人としかセックスをしたことがなくても、その人が過去にほかの人と性交渉をして、感染している可能性はないとは言えません。通常はウイルスに感染しても、異物を排除する免疫機能によって自然に排除されるのですが、約10%の人は排除されずに長期間、感染が続く場合があって、ウイルスに感染した子宮の入り口の細胞ががん化することがあります。なぜ、持続的に感染する人と、自然に排除できる人がいるのかはわかっていません。

「通常、HPVに感染してから子宮頸がんになるまで、数年から数十年かけて、ゆっくりと増殖します。がんが発見される前段階として、子宮頸部にがん化する可能性がある細胞が増えていきます。これをがんになる前の「異形成」と言います。10代で初めての性交渉を経験してHPVに感染した場合、異形成やがんが見つかり出すのは20代になった頃から。そして30代、40代でかなり増えていきます。妊活世代から、働き盛りの女性たちがかかるのが子宮頸がんなのです。そして、日本の20代、30代の子宮頸がんは1990年と2015年を比べると約1.5倍に増えていて、今も増え続けています*」(柴田先生)

*がん情報サービス がん種別統計情報「子宮頸部」

■子宮頸がんになると、どんな症状がある?

子宮頸がんは、早期のうちはほとんど自覚症状がなく、気づかないうちに進行します。子宮頸がんの2大自覚症状は、不正出血(生理ではないのに出血する)、性行為後の出血(子宮の入り口の細胞がもろくなるので、こすれると出血する)ですが、これらの症状が出たときには、がんが進行していることが多いのです。

「ですから、早期発見するには、症状がまったくなくても定期的に検診を受けることがとても大事です。20歳になったら、2年に1回は、症状がなくても子宮頸がん検診をぜひ受けてください。日本では、HPVワクチンの接種率と検診受診率の両方が、海外に比べて低いことが問題になっています。このままでは、日本だけにHPVが蔓延して、子宮頸がんになる女性が増えていくことになってしまいます。日本は、子宮頸がん検診の受診率がまだ約44%です。もちろん、ワクチンは有効ですが100%予防できるわけではありません。ふたつを組み合わせることで、子宮頸がんをほぼ予防できるようになるのです。子宮頸がんになったときの、心と体へのダメージは大きいものです。妊娠や出産をあきらめなければならなくなったり、仕事や結婚への影響もあるかもしれません。人生が大きく変わってしまうことを考えると、HPVワクチンを接種することは、大きな力になると思います」(柴田先生)

■HPVワクチンのキャッチアップ接種は1回目を9月末までに!

全国の自治体では、HPVワクチンの定期接種(無料接種)の対象となる人(小学校6年生から高校1年生の女性)には、予診票などが個別に送付されています。

「2025年3月末まで、この年齢を超えてしまった人でも、接種するチャンスがあります。16歳~27歳(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性)は、HPVワクチンの無料接種を受けられるようになる措置(キャッチアップ接種)が厚労省から発表になっています。この年代で、過去にHPVワクチンの接種を一度も受けていない、あるいは、1回または2回接種したことがある方は、2、3回目がまだであれば追加接種を無料で受けられます。1回も接種していない人は、1回目を9月末までに打たないと、2023年3月までに3回目までを打ち終わりません。無料接種できる期間を過ぎないうちに、該当年齢の方は早めに接種を考えてください。無料接種できるHPVワクチンは、3種類(サーバリックス、ガーダシル、シルガード9)あります」(柴田先生) ⇒詳しいHPVワクチンの種類は、別記事「無料接種がもうすぐ終了!「HPVワクチン」の予防効果と副作用を医師が解説」を参照

無料接種の時期を過ぎてしまうと、HPVワクチンの接種費用は、自費になります。自己負担の場合、クリニックによって多少のばらつきはありますが、HPV2価ワクチン、4価ワクチンは1回15,000~17,000円×3回。9価ワクチンは1回33,000~36,000円×3回という費用が必要です。キャッチアップ接種ができる、誕生日1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性は、子宮頸がんを予防するなら今! です。接種場所や接種法は、各自治体に問い合わせするのもいいでしょう。

「私が理事を務めるNPO法人女性医療ネットワークで、HPVワクチンの相談や実際に接種のできる全国の医療機関リストを作りました。ぜひ参考にしてみてください」(柴田先生)

【NPO法人女性医療ネットワークのHPVワクチンと検診の相談医療機関リスト】 子宮頸がん検診やHPVワクチンに関する相談可能な医療機関リスト - NPO法人女性医療ネットワーク 

■■お話を伺ったのは…柴田 綾子(しばた あやこ)先生

淀川キリスト教病院 産婦人科医 日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本周産期・新生児医学会周産期専門医(母体・胎児)。名古屋大学情報文化学部を卒業後、群馬大学医学部に編入。沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職。世界遺産15カ国ほどを旅した経験から、母子保健に関心を持ち、産婦人科医に。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社)『産婦人科研修ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)ほか。NPO法人女性医療ネットワーク理事。

取材・文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)