プライバシーがない二世帯住宅でも意外とやっていける?親世帯と子世帯を分けずに、吹き抜けでつないでみたところ…

AI要約

建築家が、二世帯住宅において世帯間の独立性を超えて家族のつながりを表現した取り組みについて紹介します。

家族がお互いの気配を感じながら暮らすための設計が施され、建物内に“路地”を設けることでつながりを表現しました。

吹き抜けを利用した“動線室”やダイナミックな意匠など、家族の出会いやコミュニケーションを促す工夫が凝らされています。

プライバシーがない二世帯住宅でも意外とやっていける?親世帯と子世帯を分けずに、吹き抜けでつないでみたところ…

二世帯住宅といえば、一般的には世帯間の独立性をどう確保するかが求められます。しかしこの住宅は違いました。「いつもお互いの気配を感じていたい」という要望が真っ先にあったからです。そして、建築家が出した答えは、建物の内部に“路地”を設けることでした。

建て主の要望を耳にしたとき、建築家の武藤圭太郎さんは意外に感じたと振り返ります。

奥さまの実家を建て替え、自らの家族3人と親世帯が一緒に暮らす二世帯住宅の計画ですが、「まず何よりもお互いの気配を身近に感じながら暮らせる家にしたい」と子世帯のご主人が求めたからでした。

二世帯住宅といえば、キッチンや水回りはもちろん、玄関も別にして両世帯間の距離を取るのが主流であり、特に奥さまの両親との共同生活になればなおのこと「独立」がキーワードになります。

武藤さんがこれまでに手掛けた何件かの二世帯住宅もそうでしたが、それとは対照的といえます。

「二世帯住宅でつながりを表現するという課題に、新鮮なものを感じました。

この住まいで必要な床面積を確保するためには3階建てにすることが必要で、その場合、親世帯は1階、子世帯は2、3階に居住することになります。

このなかで両世帯をどうつなぐのか。さまざまなスタディを重ねる中で、建物の真んなかに3層を貫く吹き抜けを設け、そこに階段や廊下を集約して空間をつなげる役割をもたせることを考えました」と武藤さん。

その吹き抜けを武藤さんは“動線室”と名付けました。そして、家族がどのような景色を眺め、どのように出会い、言葉を交わすか──。

模型をのぞき込みながら考えていきました。その結果生まれたのが、1階から2階へ、2階から3階へと軸をずらし、クランクして上がる階段と廊下であり、それに向かって大きく開口したり、バルコニーのように突き出したテラスを備えた部屋でした。

また、武藤さんは、動線室のパブリックな性格を強調するため、天井は屋根を支える大垂木を見せながら合掌させたダイナミックな意匠とし、壁は外壁を思わせるグレーのモルタル仕上げに。

さらに、スリット窓によって階段室の一部を道路に向かって開きました。まさに建物内に造形された“路地”です。