子なし政治家がアメリカをダメにする? 少子化が大統領選の争点になる背景(シェリーめぐみ)
アメリカも少子化が進み、大統領選挙でも議論の焦点となっている。
トランプ共和党が子育てや家族に関する攻撃を仕掛け、少子化の原因について論争が広がっている。
若者の子育て意欲が高いものの、経済的な負担や将来への不安が障害となっている。
【ニューヨークからお届けします】
日本や他の先進国と同様、アメリカも少子化が深刻です。そして今それがアメリカ大統領選の大きな争点になりつつあります。
民主党カマラ・ハリス新大統領候補の擁立で、新たな局面を迎えた大統領選では、今ネガティブキャンペーンがエスカレートしています。中でも大きな注目を集めたのが、ハリス副大統領やゲイのブティジェッジ運輸長官を攻撃しようと発せられたトランプ共和党のヴァンス副大統領候補のこの言葉です。
「子なしで猫を飼っているようなみじめな政治家には、家族のための政治はできない」
さらには、「子どもがいる親には、その分多く選挙権を与えるべき」。これらに対し激しい反発が起こると同時に、少子化の原因に関する論争にまで発展しています。
共和党トランプ派は「アメリカ人は子どもが欲しくない。子育てより酒を飲んだりビヨンセのコンサートに行きたいという退廃的な考えからだ」とし、キリスト教に立脚したかつての家族の価値観を、取り戻さなければならないと主張しています。
しかし研究者は「若者は子どもを欲しがっている。しかし子育て費用高騰はもとより、返せない学費ローン、住宅費などの異常な値上がりがその足枷となっている。」と指摘。
アメリカでも日本と同様、子どもに対する一時金や税制優遇措置、育児休暇の充実などが検討されています。しかしこうした政策が成功した事例は、世界的にほとんどありません。
ではどうすればいいのでしょうか? 子どもを持ちたくない大きな理由として頻繁に挙げられるのは、気候変動と銃による暴力です。つまり、子どもたちの未来がとにかく不安だから。政府はこうした問題にもっと取り組まなければならないということです。
ちなみにハリス民主党は厳しい気候変動対策と銃規制を押し出しています。しかしトランプ共和党はどちらにも強く反対。さらについ最近、子どものいる家庭の税額控除の延長が、共和党の反対で上院で否決され、「何が家族のための政治だよ」と批判を浴びています。
(シェリー めぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)