子どもが算数を好きになる「大人の関わり方」とは? 教育者・川島慶×脳科学者・瀧靖之対談

AI要約

算数教育の第一人者・川島慶先生が監修した算数図鑑『あそべる算数』の発売を記念して、脳科学者・瀧靖之先生とのインタビューが行われました。

得意・苦手という概念は経験の差によるものであり、自ら苦手だと思い込んでいるだけで実際に脳の差はないということを述べられました。

学びや成長には適度な努力が必要であり、親が子どもを支えつつ自らも学び続ける姿勢が大切であると語られました。

子どもが算数を好きになる「大人の関わり方」とは? 教育者・川島慶×脳科学者・瀧靖之対談

思考力が育つアプリ「シンクシンク」やSTEAM通信教育「ワンダーボックス」を開発した算数教育の第一人者・川島慶先生が全面監修した算数図鑑『あそべる算数』が発売されました。その発売を記念して、図鑑好きとして知られる脳科学者・瀧靖之先生と川島先生のお二人に、算数の身につけ方、子どもが算数を好きになる大人の関わり方についてお話しいただきました!(文/加藤朋美)

――算数の得意・苦手は、脳のはたらきのどのようなところが関係しているのでしょうか?

瀧先生:英会話と一緒で、算数もやったかやっていないかの経験の差なんです。ただ、どうやるかはとても大事で、好きにさせるよう大人が意識して工夫する必要はあります。脳の構造的には、得意や苦手というのはなくて、自分で苦手だと思い込んで壁を作っているだけなんです。

川島先生:まったく同意です。特に算数に関しては誤解されているケースが多いと思っていて。たとえば文章題が解けないから苦手と決めつける親御さんがいますが、それは算数というより文字を読む国語の能力を獲得中だったりするんです。一方で発達段階である幼少期は、先生にたった1度褒められたことが嬉しくて、算数が大好きになって得意になることも多いんです。つまり、きっかけ次第で好きになる、得意になる可能性は秘めているし、大事なのは問題に正解するかではなくて、自分で考える過程だということです。

瀧先生:大人でも子どもでも、何か新しいことを学ぶときは、簡単すぎてもダメで、ちょっと努力したらできる学びがいいんです。私も学生時代に友人らを見ていて感じたのですが、成績がいい人は「ここまではわかるけれどここから先ができない」と自分を俯瞰で見ることができるんですね。メタ認知力が高いとも言えますが。

川島先生:そうですね。ただ、その判断を自分でできるかは相当難しいんですけどね。ちなみに、私は自分自身が中学受験をした際、親にまったく干渉されなかったので自分で楽しみながらやっていきましたが、瀧先生は息子さんの中学受験にどのように関わられたんですか?

瀧先生:私は中学受験がどんなものかわからなかったので、まずは一緒にやってみようと思って。息子は算数への苦手意識があったので、6年生の頃は1日8時間くらい一緒に解いていたこともあります。すると、「こんなに難しいものをやっているのか! すごいな」と心の底から息子へのリスペクトの気持ちが生まれるんです。意識していたのは、伴走しながらも干渉しすぎないことです。息子の中学受験を通して感じたのは、ピアノやサッカーでもプロを目指して頑張る子たちがいるように、中学受験は勉強のプロを目指しているようなものだということ。もちろん、親が押しつけてしまうと教育虐待になりかねませんから、加減は難しいのですが、本人がやりたいと思うなら頑張ればいい。私は息子を見ていてやってよかったなと思います。

川島先生:勉強でも運動でも本気で頑張ることには変わりないですからね。とはいえ、小学生の時期に、あれだけの量と内容をやる今の中学受験は本当にすごいです。