【インバウンドでも大注目される日本初の長距離トレイル】設立50周年を迎える「東海自然歩道」って、どんな道?

AI要約

日本各地で整備が進められている長距離トレイルについて紹介。

日本初の長距離自然歩道「東海自然歩道」の歴史や背景。

最新の長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」やコロナ禍の影響について。

【インバウンドでも大注目される日本初の長距離トレイル】設立50周年を迎える「東海自然歩道」って、どんな道?

 ここ数年、日本各地で続々と「ロングトレイル」や「長距離トレイル」と呼ばれる道の整備が進められていることはご存じでしょうか。長距離トレイルは、山を登るための“登山道”とは似て非なるもの。山だけではなく、海沿いや時には街中も通過しながら、文字通り“長く歩くこと”を目的に設計された道なのです。

 コロナ禍を経て人々の健康意識が高まり、山登りよりも身近なところから始められる長距離トレイルを取り巻く環境が、にわかに騒がしくなり始めています。2024年は日本初の長距離自然歩道「東海自然歩道」が設立から50周年を迎えました。

 これを機に、「長距離トレイル」とはどのようなものなのかを紹介してみましょう。

 日本初の長距離自然歩道「東海自然歩道」が完成したのは、1974年7月のこと。東京都の八王子市にある「明治の森高尾国定公園」を起点に、大阪府箕面市の「明治の森箕面国定公園」までを結ぶ、総延長1,748km、11都道府県60市町村に跨る長大なトレイルです。

 アメリカのロングトレイルの文化を模して環境省が構想を進めた道ですが、沿線の緑豊かな自然と貴重な歴史的文化財を訪ねながら、日本ならではの四季を通じてハイキングが楽しめる「現代版・東海道五十三次」とでも呼ぶべき道に仕上げられています。

 構想の背景には、高度経済成長期における急激な都市化やモータリゼーションの進行によって引き起こされる環境問題や、運動不足に起因する生活習慣病や精神疾患のリスクの高まりという社会的な問題がありました。そこで、「人間性の回復」と「歩くことの復権」という理念を掲げて計画されたのが長距離自然歩道です。

 この歩道を軸にして、利用性の高い国定公園を各地に帯状に配置すること、そして都市部から郊外に無秩序に開発が進むこと(スプロール化)に対する自然保護の防波堤にしよう、という狙いもあったそうです。

 東海自然歩道を皮切りに、九州自然歩道、四国自然歩道など、全国各地で長距離自然歩道の整備が進められてきました。整備が完了すると、全国の自然歩道の総延長は約27,000kmにもなるといいます。

 しかし、各自治体や都道府県が歩道の維持管理を続けてはきたものの、正直なところ、自然歩道の一般認知度は低く、利用される機会が少ないなど、運用面でのさまざまな課題を抱えていました。

 風向きが変わったのは、2019年に一番新しい長距離自然歩道である「みちのく潮風トレイル」が開通したことです。

 この歩道は、日本の長距離自然歩道としては初めて官民連携となる民間組織によって管理運営が始まった事例でした。メディアでの露出も多く、これまでの長距離自然歩道への注目度とイメージを大きく変えるきっかけとなりました。

 加えて、2019年に起きたコロナ禍も奇しくも追い風になりました。健康志向が高まり、アウトドアへの関心は増えたものの遠出はできない。そんな特殊な状況下で、気持ちよく自然の中を歩いて回れる素晴らしい歩道が近所にあることが再認識され、その魅力が拡散されていったのです。