ヴァナゴンの名でお馴染みのフォルクスワーゲンTシリーズにニューモデル、T7がドイツでデビュー

AI要約

2024年8月1日、フォルクスワーゲンは商用バンの「T7トランスポーター」の概要を明らかにした。

T7トランスポーターは、VWタイプ2に始まる商用バンの7代目であり、フォードの車体を使用して開発された。バリエーション豊富で、EVモデルもラインナップされる。

ボディ・サイズの拡大や先進安全装備の搭載など、多くの特徴や改良が施されたT7トランスポーターの詳細を紹介。

ヴァナゴンの名でお馴染みのフォルクスワーゲンTシリーズにニューモデル、T7がドイツでデビュー

2024年8月1日、フォルクスワーゲンは商用バンの「T7トランスポーター」の概要を明らかにした。

◆VWタイプ2の後継車

T7トランスポーターと聞いても、一体どんなモデルなのかイメージできない人もいると思うので、改めて説明すると、VWタイプ2に始まるワンボックス・スタイルを持つ商用バンの7代目である。日本には3代目のT3や4代目のT4の時代に、その乗用モデルが「ヴァナゴン」の名で正規輸入されたこともあるものの、それ以降は長らくラインアップから外れている。

T7の乗用モデルである「マルチバン」は、2021年にひと足早く登場している。なんと「ゴルフ」などと同じMQB evoを採用したラージ・クラスのミニバンで、sHybridというプラグイン・ハイブリッド(PHEV)もラインアップしている。ドイツでは「メルセデス・ベンツVクラス」と人気を二分する上級ミニバンだ。

◆フォードの車体を使用して開発

今回のT7トランスポーターは、その商用モデルである。先代のT6までは、乗用、商用とも車体を共通していたが、新型のベースはT7のマルチバンではなく、フォードで「ウィンドウバス」と呼ばれる「トランジットカスタム」「トルネオカスタム」となる。じつはVWとフォードは、2020年6月に商用車の車体共用化で合意しており、T7トランスポーターは、フォードの車体を使用して開発された。

バリエーションは、「パネルバン」と2列シートの「パネルバン・プラス」、乗客輸送用の「コンビ」、ロング・ホイールベースの架装用プラットフォーム・ボディの「ダブルキャブ・バリアント」、そして9人乗りのシャトルバス仕様である「カラベル」が用意される。

◆全長5m、全幅2mの大柄ボディ

ボディ・サイズは、標準ボディが全長5050mm、全幅2032mmと大柄で、先代T6.1と比較すると146mm長く、128mm幅広い。3100mmのホイールベースもT6.1より97mm伸びている。ロング・ホイールベース仕様は全長5450mm、ホイールベース3500mmと、それぞれ400mm長い。

これにより、T7トランスポーターは荷室が大幅に拡大。ホイール・ハウジング間が最大148mm拡大して1392mmとなり、フロア長は標準ホイールベース車が2602mm、ロング・ホイールベース車は3002mmもあるので、ユーロパレットを簡単に積載可能。最大積載容量は、標準ホイールベースの標準ルーフ車が5.8立方メートル、ロング・ホイールベースのハイルーフ仕様は9.0立方メートルにも達する。

◆EVもラインナップ

パワートレインは、6段MTまたは8段ATが組み合わされる、110㎰、150㎰、170㎰の3種類の2.0リッター直4ディーゼル・ターボのTDIのほか、自然吸気2.5リッター直4ガソリン・エンジンに電気モーターを組み合わせ、232㎰の最高出力を実現した新開発プラグイン・ハイブリッド(PHEV)、さらには136㎰、218㎰、286㎰の3種類の電気自動車=バッテリーEV(BEV)も設定。BEV仕様のバッテリー容量は64kWhだが、都市部の配送輸送用により小型のバッテリーを搭載したモデルの発売も予定している。

駆動方式は前輪駆動のほかに4WDの「4モーション」も設定。ただしBEVは後輪駆動が基本で、4モーションは後日追加される。

◆独自のフロント・マスク

エクステリアは、LED式ヘッドライトやLED式リア・コンビランプが標準で、フロント・マスクもT7マルチバンに近い雰囲気となっている。ただし、リア・ビューはフォード・トランジットカスタム&トルネオカスタムとほぼ変わらない。

インテリアは基本的にフォード・トランジットカスタム&トルネオカスタムと共通だ。ドライバー正面には12インチのメーター・ディスプレイと13インチのインフォテインメント・ディスプレイが備わり、そのすぐ横にスターター・ボタンが備わる。またパーキング・ブレーキ・レバーはなく、代わりにダッシュパネル中央に電動パーキング・ブレーキ・スイッチを配置。AT車はステアリング・コラムにシフト・セレクターを装備する。全体的にとても機能的でスッキリとしたデザインで、荷室や後部座席へのアクセスがグッと容易になった印象だ。さらにUSB-A、USB-C、12Vソケットのほか、オプションで230Vソケットも設定され、様々なデバイスの接続から電動丸鋸まで、あらゆる電気機器の使用に対応可能となっている。

インフォテインメントは、DAB+やApple CarPlay、Android Autoのほか、様々なオンライン・サービスに対応。レーンアシストや自動緊急ブレーキ、制限速度を表示し、速度超過時には警告を発するダイナミック・ロードサイン・ディスプレイなど先進安全装備も搭載する。

◆ミニバンとして使えるカラベル

カラベルは、3列目に脱着可能なベンチ・シートを備えた9人乗りのシャトルバスで、コンビと比較すると上質なファブリックのシート表皮やサイド・エアバッグ&カーテン・エアバッグ、10スピーカーのオーディオ・システムなどを備えている点が特徴。エクステリアも、ボディ同色のミラーやドア・ハンドル、16インチ・アルミホイールなどが奢られる。最上級モデルの「カラベルスタイル」は、クロームのストリップやLEDマトリックス・ヘッドライト、17インチ・アルミホイール、レザーレット・シート、3ゾーン・オートエアコンまで備わる。

◆パンアメリカーナが復活

T4やT5で人気を博した「パンアメリカーナ」の復活もニュースだ。パネルバンとカラベルに設定されるこれは、前後バンパーとホイールアーチ、サイドシルが未塗装とされ、SUVのようなオフロード・イメージが際立ったスタイルに仕立てられる。またステンレス製の照明付きインレイ・ステップや、グロスブラックの加飾パネル、クロームのインナー・ドア・ハンドルなどを採用。さらに、カラベル・パンアメリカーナには、ダイヤモンドカット仕上げを用いたブラックの専用19インチ「インディアナポリス」アルミホイールが装着される。

ドイツにおける価格は、19%の付加価値税込みで、最もベーシックなパネルバンの標準ホイールベース車が4万3768ユーロ(約690万円)、ロング・ホイールベース車は4万5845ユーロ(約720万円)となっている。

文=竹花寿実

(ENGINE WEBオリジナル)