「食欲の暴走」にブレーキをかける、「日本人」なら食べておきたい「意外な食べ物」

AI要約

遺伝子と体質は生活環境によって変わることが明らかになっている。

動物性脂肪への依存症を改善するためには、玄米を食べることが効果的である。

食物繊維を摂取することで健康リスクを軽減し、体調を整えることが重要である。

「食欲の暴走」にブレーキをかける、「日本人」なら食べておきたい「意外な食べ物」

「生まれ持った遺伝的な体質」は変えられる! 最新科学が示す「日本人が健康になる秘訣」とは?

親から受け継いだ遺伝子は生涯変わらないから、がん、糖尿病、認知症、高血圧、肥満など、さまざまな病気のリスクや体質は「遺伝的なものだし仕方ない」と思っていませんか。しかし、近年のゲノム生物学の進歩によって、生活習慣や環境で遺伝子の働きが変わり、「病気のなりやすさ」も変わることが明らかになってきています。日本人の遺伝子と体質の特徴を捉えていくと、どうすれば遺伝的なリスクを抑え健康に過ごせるかが見えてきます。

*本記事は『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(講談社ブルーバックス』を抜粋・再編集したものです。

動物性脂肪を食べ過ぎると脂肪を多く含む食品への依存が発生すると聞き、「どうやら自分も依存症みたいだ。今さら抜け出すことはできないんだろうか?」と感じた人がいるかもしれません。

抜け出すための鍵はすでにみつかっています。動物性脂肪の依存症になって肥満したマウスの脳ではエピジェネティクス変異が起きていて、ドーパミンを受け取る構造を作るよう指令を出す遺伝子のスイッチがオフになっていました。

そのため、遺伝子のスイッチが切れるのをじゃまする物質を使って遺伝子をオンにしたところ、マウスは動物性脂肪を多く含む餌を以前ほど食べなくなりました。取りつかれたように動物性脂肪を食べていたのが嘘のようです。

もちろん、こんな危険な物質を人に使うわけにはいきません。2021年の時点で遺伝子のスイッチを切り替える技術に関する明確な規制はないため、使用しただけで罰せられることはありませんが、スイッチがオフでなければいけない他の遺伝子までオンにしてしまう恐れがある以上、投与は慎重に検討すべきです。

でも大丈夫、もっと安全な選択肢があります。玄米です。玄米に含まれる‒オリザノールという成分は脳で起きた好ましくないエピジェネティクス変異を修正して、動物性脂肪への依存症をやわらげると報告されています。稲の籾を包む固い籾殻を除いたものが玄米で、ここからさらに糠と胚芽をはがすと白米になります。‒オリザノールは稲の糠に含まれているため、白米からは摂取できません。

人での研究も始まっています。メタボリックシンドロームに該当する日本人男性を2つのグループに分けて、白米と玄米を2ヵ月ずつ食べてもらう実験を行いました。他の食品の摂取量は同じで、白米だけを同じカロリーの玄米に置き換えています。

すると、白米を2ヵ月食べたあとで玄米を2ヵ月食べると体重とBMIが減少し、インスリンの効き目がよくなるとともに、総コレステロール値と悪玉コレステロール(LDL)値が改善しました。さらに、玄米を食べているあいだだけ内臓脂肪が明らかに少なくなった一方で、皮下脂肪の量は変わらなかったこともわかりました。図4‒5のグラフは体重の変化をまとめたものです。

第2章で説明したように内臓脂肪は皮下脂肪とくらべてやっかいな脂肪で、生活習慣病やがんを引き起こします。玄米は有害な内臓脂肪に集中的に働きかけてくれるわけです。

ところが、玄米を2ヵ月食べたあとで白米を2ヵ月食べたグループは、体重が増加しただけでなく、玄米を食べているあいだに起きた望ましい効果が消えて、実験開始時の状態に戻ってしまいました。

最近は玄米の健康効果が知られるようになり、産地や栽培方法にこだわって購入する人もいます。しかし歴史を振り返れば、精米技術が進歩した江戸時代以降、玄米を含む雑穀は白米より軽んじられる傾向が続いていました。

そんななかでも、「いや、健康のためには玄米を食べるほうがよい」という思想が受け継がれ、実践していた人が少なくありませんでした。医学的な知識はなくとも、玄米と白米のどちらを食べるかで体調が違うことを肌で感じていたのでしょう。

肥満防止には‒オリザノールだけでなく、白米とくらべて玄米に6倍多く含まれる食物繊維も大きな役割を果たします。その主役は先ほども述べたように、食物繊維を分解してできる短鎖脂肪酸です。

短鎖脂肪酸には他にも健康効果があり、大腸でのカルシウム、マグネシウム、鉄の吸収を促すとともに、肝臓でコレステロールが作られるのをおさえ、さらには大腸の粘膜に発生した異常な細胞にアポトーシスを起こさせて、がんになりにくくすると考えられています。アポトーシスは細胞死ともいい、細胞を破壊して体を守るためのしくみでしたね。

妊婦さんが食物繊維をしっかり摂取すれば子どもの肥満防止に役立つ可能性があるだけでなく、東アジア人は食物繊維を多く摂取すると糖尿病の数値が改善し、日本人は心臓病や高血圧を発症しにくくなることは第2章で説明しました。

日本で食物繊維の摂取が減った大きな原因が、玄米や大麦、雑穀に代表される穀物をあまり食べなくなったことです。日本人の腸には諸外国の人とくらべて善玉菌が多くいるのに、その餌となる食物繊維が不足していたら善玉菌も働きようがありません。

さらに連載記事<ヨーグルトを食べて体調が悪化…じつは「日本人」にとっては「意味がない8つの健康法」>では、日本人の体質とがんの関係について、詳しく解説しています。