結城真一郎氏インタビュー「算数の文章問題って矛盾だらけ。その感覚を作品に生かした」初の児童書は大人も楽しめる謎解きミステリ

AI要約

小説家・結城真一郎氏が初の児童書『やらなくてもいい宿題』に挑戦し、算数の謎解き要素を取り入れた作品について語る。

結城氏が算数の文章題に対する疑問から本作のアイデアを得た経緯や、子ども向けにわかりやすく謎解き要素を取り入れた理由について述べられている。

作品では問題解決後に現実で通用しない側面を考えさせる構成になっており、爽快感と学びを組み合わせたユニークな読書体験を提供している。

結城真一郎氏インタビュー「算数の文章問題って矛盾だらけ。その感覚を作品に生かした」初の児童書は大人も楽しめる謎解きミステリ

『#真相をお話しします』(新潮社)が累計50万部超の大ヒットを記録し、いま最も注目を集める小説家・結城真一郎氏。最新作『やらなくてもいい宿題』(主婦の友社)は「子どものための謎解きストーリー」。初の児童書に挑戦した結城氏にお話を伺った。

――『やらなくてもいい宿題』、謎の転校生・ナイトウカンナが出題する算数の問題に、まんまと翻弄されてしまいました。主人公・東雲数斗と同じく、ふつうに解いて「できた!」と思ったらひっくり返されて悔しかったです(笑)。

結城真一郎さん(以下、結城):狙いどおりです(笑)。主婦の友社さんから児童書を書いてみませんかとご依頼いただいて、最初に考えたのは、ふだん本を読まない子たちに対してどうすればハードルを下げられるだろうか、ということだったんですよね。算数の文章題、と言われたら身構えてしまうけれど、ひっかけクイズと重なってダブルの謎解き要素を加えられたら、子どもたちも楽しんでもらえるんじゃないかな、と。

――大人も楽しめると思います。でも、問題を考えるのは難しかったのではないですか。

結城:そこがいちばん大変でした。ただ、算数の文章題って冷静に考えたら矛盾だらけだよな、というのは子どもの時から僕自身が感じていたことなんですよ。たとえば「分速50メートルで出発したAくんを30分後にBくんが追いかけて……」みたいな旅人算でも、どうして自分の歩く速度を認識しているんだ、そもそも永遠に変わらない速度で歩けると思ってるのか?と考えてしまうし、「50本の鉛筆を6人で分ける場合……」って、いったいなんのために!?と、いちいち突っ込まずにいられなかったんですよね。

――りんごとみかんの数が足りない問題に、「人数分用意しておけよ」と思った記憶があります(笑)。

結城:そうなんですよ。もちろん数学的思考を鍛えるうえでは重要な問題ですし、それはそれで解くのも楽しいのですが、せっかくならその感覚を作品に生かせば、おもしろいものになるんじゃないかなと思ったのが、きっかけの一つです。

――本作では、数学的思考でしっかり問題を解かせたあとに「でもそれだけでは通用しない現実もあるよね?」と一歩先を考えさせるつくりになっていて、「なるほど!」と納得する爽快感とともに、学びにもなるのがすごいなと思いました。

結城:その疑いのまなざしが実生活でどこまで生きているかはわかりませんが、僕自身、「見えていることの裏側で何が起きているのか」を考えるクセがついているおかげで『#真相をお話しします』みたいな小説が書けましたからね。子どものころから斜にかまえていて、隙あらば誰かをひっかけてやろうと考えていた、お世辞にも性格がいいとは言えないタイプだったけれど、ミステリーを書くうえでは必要なスキルだったかもしれないな、と最近では実感しています。