芥川賞・直木賞の正賞は時計|作家・山本一力が語る「直木賞正賞の銀時計」余話

AI要約

山本一力さんは作家であり、第126回直木賞を受賞し、76歳の方です。彼は過去に多くの文学賞を受賞しており、著作も多数あります。

直木賞は日本の文学界で非常に栄誉ある賞であり、受賞者には懐中時計と副賞が贈られます。山本一力さんはその時計を手にしたとき、喜びと同時に作家としての責任を感じたと述懐しています。

直木賞を受賞して以降、山本一力さんは中の人として、作家としての本当の苦労が始まったと感じています。

芥川賞・直木賞の正賞は時計|作家・山本一力が語る「直木賞正賞の銀時計」余話

山本一力さん(作家、第126回直木賞受賞・76歳)

1948年、高知県生まれ。旅行代理店勤務などを経て『蒼龍』でオール讀物新人賞を受賞。『あかね空』で第126回直木賞を受賞。2012年に第1回歴史時代作家クラブ賞、2015年に第50回長谷川伸賞を受賞。近著に『湯どうふ牡丹雪 長兵衛天眼帳』など。

日本の文学界において、もっとも栄誉ある賞のひとつとして広く知られるのが芥川賞と直木賞である。受賞者には正賞として懐中時計、副賞に100万円が贈られる。正賞が時計になったいきさつについて、賞を贈呈する日本文学振興会の広報担当者はこう語る。

「1935年の賞の創設当初に、文藝春秋社専務だった佐佐木茂索氏が“現金だけというのは、なんとなくむき出しみたいで嫌だった”と語ったと伝わっています」

その正賞の時計とはどのようなもので、手にしたとき胸に去来したものは何だったのか。

『あかね空』で第126回(2001年下半期)直木賞を受賞した、山本一力さんに聞いた。

「じつはこの銀時計の前に『蒼龍』でオール讀物新人賞(1997年度)を受賞し金時計を貰っているんです。そのときはもう嬉しいのひと言。この時計を手にしたときが作家としてのスタートでしたね。ただし、それからなかなか次作が認めてもらえず、出版社に乗り込み、編集者に食ってかかることもありました。帰り道、皇居のお濠端を通ると芥川賞・直木賞の授賞式が開催される東京會舘が見えるわけです。次は絶対に、あの建物の中からお濠を眺めてやると思ったものです」(山本さん、以下同)

それから5年後、山本さんは直木賞を受賞し、みごと東京會舘の「中の人」となる。

「會舘からお濠を見下ろしたときは叫びたいくらい嬉しかったですよ。でも、銀時計を手にしたときに感じたのは戸惑いなんです。これからは常に読まれるものを書き続けなければならない。歴々の先人たちと同じように、私がこの時計を持っていてもよいのだろうか、という思いの方が強かったですね。直木賞を受賞してからが、作家として本当の苦労の始まりでした」