孫が新卒で入った会社を1ヶ月で辞めてしまいました。奨学金「300万円」が残っているのですが、私が肩代わりすると「税金」がかかるでしょうか? 非課税にする方法はあるでしょうか?

AI要約

奨学金の返済が難しい場合、親や祖父母が肩代わりする際にかかる贈与税について解説しています。

贈与税回避の方法として、暦年贈与や相続時精算課税制度を利用することが紹介されています。

贈与税対策の具体的な計算式や条件についても詳しく説明されています。

孫が新卒で入った会社を1ヶ月で辞めてしまいました。奨学金「300万円」が残っているのですが、私が肩代わりすると「税金」がかかるでしょうか? 非課税にする方法はあるでしょうか?

大学など各種学校へ通う際に借りた奨学金は、学校を卒業後に返済していくケースが多いのですが、さまざまな事情で返済が難しくなることもあるかもしれません。経済的な事情で親が奨学金返済を肩代わりできない場合、祖父母としてどのような方法をとれば良いのでしょうか。

労働者福祉中央協議会が2023年に公表した「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」の結果によると、奨学金を受けた人のうち、有利子の奨学金を受けた割合は約6割、無利子の奨学金を受けた割合は約5割(複数回答)で、無利子や給付型を受けても足りずに有利子の奨学金を借りているケースもありました。

奨学金の借入総額の平均は約310万円で、毎月の返済平均額は約1万5000円です。返済期間は14.5年で、「返済が苦しい」と回答した人は約44.5%、このうち「かなり苦しい」が20.8%でした。学校卒業後の奨学金返済を負担に感じている人が多い傾向といえるでしょう。

親や祖父母が、子ども(孫)の奨学金返済を肩代わりした場合には贈与税の対象になります。その理由は、子ども自身で返済する奨学金(債務)を肩代わりしてもらったことで、子どもが利益を受け取ったとみなされるからです。

奨学金300万円を祖父母や親が一括で肩代わりした場合に、お金を受け取った子どもに課税される贈与税は次の計算式で試算できます。

奨学金300万円-贈与税の基礎控除額110万円=贈与税の課税対象額190万円

贈与税の課税対象額190万円×贈与税率10%=贈与税見込み額19万円

計算式の贈与税率は「特例税率」を使用しています。お金を受け取った年の1月1日時点で18歳以上の人が、祖父母や親などの直系尊属から贈与を受けた場合に適用される税率で、通常の贈与財産への課税率よりも低く設定されています。

なるべく贈与税がかからずに孫へお金を渡す方法は、主に2つあります。

(1)年間110万円までの「暦年贈与」を利用する

税務署から贈与とみなされない対策方法として「暦年贈与」制度を利用できます。これは、お金を受け取る人(受贈者)が年間110万円まで贈与税非課税になり贈与税の申告も不要な制度です(年間110万円を超えた場合は、原則として贈与を受けた翌年の3月15日までに申告が必要です)。

例えば、祖父母が300万円の奨学金の肩代わりとして孫に年1回100万円ずつ3回(3年)に分けて贈与することも可能です。ただし、同一の受贈者に対して決まった時期に決まった金額を贈与すると「定期的な贈与(定期金給付契約)」とみなされて贈与税がかかってしまう恐れがあります。

税務署に定期金給付契約だとみなされると、1回目の贈与のみ贈与税基礎控除(110万円)が適用され、残る全額が贈与税の課税対象になってしまいます。

定期的な贈与とみなされない対策として、贈与するお金を毎年同じ時期ではなく「今年は4月に100万円贈与したので、来年は6月に95万円、再来年は9月に105万円」などと贈与する時期や金額に変化をつけることと、毎年贈与するときに贈与契約書を作成することが有効です。

(2)「相続時精算課税制度」を利用する

相続時精算課税制度とは、2500万円までの贈与が非課税になる制度です。お金を贈る人が贈与をした年の1月1日時点で60歳以上であり、受贈者が贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であり、子どもや孫への贈与であることが必要な条件です。

暦年贈与と違う点としては、将来に相続が発生した時に、相続時精算課税制度で贈られた金額が相続税の課税対象になることです。相続時精算課税制度を選択するためには、最初の贈与を受けた年の申告書とともに届出書類の提出が必要です。