別府市ひき逃げ事件で重要指名手配の八田與一容疑者が逃亡を続ける目的は?【「表と裏」の法律知識】

AI要約

2022年に大分県で起きたひき逃げ事件の被疑者が重要指名手配犯となり、公訴時効の問題が浮かび上がる。

公訴時効により、殺人罪と道路交通法違反の処罰には違いがあり、容疑者の逃亡期間が処罰可能な期間を左右する。

容疑者を殺人罪に切り替えるべきか議論がありつつも、証拠不足や容疑者の証言が取れないことから難しい状況。

別府市ひき逃げ事件で重要指名手配の八田與一容疑者が逃亡を続ける目的は?【「表と裏」の法律知識】

【「表と裏」の法律知識】#241

 2年前の2022年6月、大分県別府市の交差点で、バイクに乗っていた大学生2人が車に追突されて死傷し、犯人が逃走するというひき逃げ事件がありました。この事件で八田與一容疑者(27)は、全国で初めて道路交通法違反で“重要指名手配犯”に指定されています。

 指名手配は、逮捕状を発しても被疑者の居場所がわからない場合などになされますが、その中でも重大な犯罪に関しては“重要指名手配犯”とされます。現在、重要指名手配犯として情報提供が呼びかけられているのは11人ですが、八田容疑者以外の容疑はすべて殺人か強盗です。そこに道路交通法違反の容疑者が含まれているのは異様に思えるかもしれませんが、それは“公訴時効”との関係があると考えられます。

 殺人などの「人を死亡させた罪であって死刑に当たる罪」については公訴時効がありません。しかし、ひき逃げのような救護義務違反の場合には、公訴時効が7年です。八田容疑者はすでに2年間逃亡しているので、残りは5年。早く見つけ出せなければ、処罰を受けさせることもかなわなくなってしまうわけです。

 そこで、八田容疑者については、道路交通法違反ではなく殺人罪へと切り替えるべきだという声も上がっています。管轄の大分県警でも指名手配とした当時において「殺人含め、過失致傷、危険運転致傷などを視野に入れている」との見解を示していました。ただ、本人の供述が取れない以上、殺人罪において重要とされる「動機」や「故意」を解明することが困難であるといった事情から、簡単には容疑を切り替えられないのではないかと考えられます。

 事件発生から長い時間が経過してしまえば、容疑を固めるための新たな証拠を見つけ出すことが難しくなりますし、容疑者の風貌も変わり、発見することはますます難しくなります。一刻も早い解決を望まずにはいられません。

(髙橋裕樹/弁護士)