治安維持の歴史とともに歩む「歌」 今も高らかに 警視庁150年

AI要約

警視庁のかたわらにある楽曲から、警視庁が歩んだ150年におよぶ治安史の一端が垣間見える。

警視庁の歌や機動隊の歌など、警視庁関連の楽曲が日本の治安維持において果たしてきた役割。

警視庁の歌は職員にとって馴染み深く、機動隊の歌は暴徒鎮圧の際に隊員を鼓舞する。

治安維持の歴史とともに歩む「歌」 今も高らかに 警視庁150年

内乱の鎮圧、暴徒化するデモとの対峙(たいじ)…。日本の治安維持を担ってきた警視庁のかたわらには、いつも「歌」があった。「警視庁の歌」、機動隊の「出動の歌」など、時代を超えて今も演奏される楽曲からは、警視庁が歩んだ150年におよぶ治安史の断面がのぞく。(内田優作)

■警視庁の歌

《なり渡る自由の鐘に、盛り上がる平和の力》

この一節から始まる庁歌「警視庁の歌」は、警視庁職員にとって、最もなじみが深い一曲だ。警察学校の式典や異動行事、観閲式などさまざまな場で演奏、歌唱される。発表は昭和24年。内部の公募で集まった153作から警察学校の山口栄巡査の作詞したものが選ばれた。

発表時、職員誌『自警』(24年3月号)に掲載された講評では次点作が「形式が古く、軍歌調に堕する虞(おそれ)」と評されたのに対し、この歌詞は「一般民衆も唱和出来る」と評価された。強権的といわれた戦前の警察を脱し、「民主警察」に移行しようという時代背景がうかがえる。

音楽隊で歌唱を担当する山下毅巡査部長(58)は「前向きに仕事するため、初心に戻ることができる曲」と話す。自身も歌いながら機動隊や警察署勤務時代を思い出すことがしばしば。歌う際は聞き取りやすいようにはっきりと発声するほか、一緒に歌う聴衆の警察関係者が歌詞を思い出しやすいよう、少しだけ早く歌うことも心掛ける。

1、3番が演奏されるのが通例だが、過去には「炎熱の巷の中や、星凍る冬の夜空に…」と厳しい環境でも職務に臨む気概を歌った2番へ愛着を持つ総監もいた。在任中、庁内では通しで演奏されたという。

■機動隊の歌

ときに暴徒鎮圧のため肉弾戦を強いられる機動隊でも、さまざまな曲が隊員を鼓舞してきた。

26年、前身の警視庁予備隊時代に庁内の公募を経て発表されたのが「出動の歌」だ。こちらも作詞は警視庁警察官。《暴力の輩騒げば、輸送車は地軸をゆすり…》という歌詞からは、共産党が武装闘争路線を展開するなど不穏な世相の中、治安を担うことへの自負がにじむ。

「この世を花にするために」と「この道」も欠かせない。学生運動が激化した昭和44年、当時の秦野章警視総監の肝煎りでつくられた。いずれも川内康範さんの作詞、猪俣公章さんの作曲で歌謡曲調。歌手の橋幸夫さんの持ち歌としても知られる。