92歳の谷川俊太郎が、ここにきて思う「戦争」「絶望」「諦めた」こと…今や「何でもありだ」と思うようになっています

AI要約

谷川俊太郎さんと宮内ヨシオさんのコラボレーションによるアート名言集が話題を集めている。命への想いや生きる力、幸福についての言葉が収録されており、安らぎと希望を与える内容となっている。

谷川俊太郎さんは、戦争時代を経験し、現在の混沌とした世界にも冷静な見方を示す。アート名言集では、生きることの意味や生命力がテーマとして掲げられている。

谷川俊太郎さんは92歳であり、若い世代とは異なる視点から生きることについて語っている。絶望や葛藤も受け入れつつ、自由な発想で現実を直視する姿勢が伺える。

92歳の谷川俊太郎が、ここにきて思う「戦争」「絶望」「諦めた」こと…今や「何でもありだ」と思うようになっています

 不安な世の中で、毎日の仕事や生活に疲れている私たちが、改めて問い直したい命への想い。そんななか、「生きる力」や「幸福」をうたい、生きる喜びを味わえるアート名言集が刊行され、発売後即重版をして話題になっている。

 ことばを寄せたのは、詩人であり、『マザー・グースのうた』、スヌーピーシリーズ『ピーナッツ』の翻訳でも知られる谷川俊太郎さん。動物や植物を美しく精緻に描いたのは、イラストレーターの宮内ヨシオさん。二人のコラボレーションが、見る人に安らぎと希望を与える本を生み出した。

 そこで、92歳の谷川俊太郎さんに、『生きてるってどういうこと? 』で綴られた珠玉のことばの重みと、命の輝きについて伺った。

 アート名言集『生きてるってどういうこと? 』は、「生きる力と生命力について」がテーマとなっている。

 世界では、昨年からウクライナ戦争が長引き、年が明けたばかりの1月1日には能登半島地震が起こるなど、大きな自然災害にも見舞われている。この混沌とした時代のなかにあって、「生きるとはどういうことか」が問われる時代になっている。

 谷川俊太郎さん(以下、谷川):僕が育ったのは、小さなころから戦争が始まっていて、小学生から中学生にかけて東京が空襲されて焼け野原になっていた時代です。戦争のリアリティは、小さなころから知っていました。

 だから、今、ウクライナとロシアが戦争をしていても、当たりまえのことのようにして見ちゃいますね。戦争は嫌なんだけれども、これは人間の運命というか、宿命みたいなもので、戦争はいくら未来になっても終わらないだろうという感じを持っています。

 一種の諦めのようなものなんだけれども、そこにあるリアルな感じを持っていた方がいいんじゃないかと思います。人間はやっぱり争うからね、勝負ごとが好きでしょう? 年を取ったら、いろいろな事件が起こっても、もう平気になっちゃいましたね。

 1931年に東京に生まれた谷川さんは、中学生の時に1945年の東京空襲を経験している。その後、母とともに京都に疎開し終戦を迎える。翌年3月に焼け野原の東京に戻ってきた。

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 生きているということ

いま生きているということ

 鳥ははばたくということ

海はとどろくということ

かたつむりははうということ

 人は愛するということ

あなたの手のぬくみ

いのちということ

 生きる『うつむく青年 詩集』(サンリオ)より

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 今、働き盛りの年ごろの人々が、生きることに迷っている。目の前の生活に追われ、疲れてしまっている人も多い。

 谷川:ある程度の年齢になると、若い人とはまったく発想が変わるんですよ。諦めてもいい、絶望してもいい。そういったマイナスの価値が認められるようになる。言ってみればすごく自由になっているんです。

 自分が感じることは全部リアリティがあるんだと思うようになり、「こういうふうに感じちゃいけない」とか「こんなことは思っちゃいけない」といったことがないんです。今や「何でもありだ」と思うようになっていますね。

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 つづく<92歳の谷川俊太郎がいま思っている『生きてるってどういうこと? 』の答え…黒柳徹子が絶賛した>では、谷川俊太郎さんが考える「ことば」と「原動力」をお話しています。

 (構成・文/高木 香織)