「嚥下障害」に効果的! 体力が低下していても実践できる「のどや舌の筋力アップ訓練法」

AI要約

「食べる力」が衰えると、嚥下機能、呼吸、発声にも問題が生じやすくなる。

舌やのどの筋力を強化するトレーニングが飲み込みを改善し、嚥下リハビリにも効果的。

筋力アップの取り組みは継続して行い、高齢の方は改善後も運動を続けることが重要。

「嚥下障害」に効果的! 体力が低下していても実践できる「のどや舌の筋力アップ訓練法」

 「食事中によくむせる」「食べこぼしが多い」などの症状が、ご自身あるいはご家族に起きている人はいませんか? 「食べる力」は、年齢とともに衰えてきます。自覚がある場合、もしかすると嚥下障害を起こしているのかもしれません。

 嚥下障害(摂食嚥下障害)とは、口からうまく食べられない状態をいいます。嚥下機能の低下は、窒息を起こしやすくするだけでなく、誤嚥性肺炎という、高齢者にもっとも多いタイプの肺炎を招く原因にもなってしまいます。肺炎は日本人の主な死因のひとつで、高齢者にとっては、まさに命にかかわる重大な病気です。

 そこで、全8回にわたり、食べる力の維持や嚥下機能の回復を目指すためのヒントをQ&A形式でご紹介します。早めに対処して、食べる喜びを末永く味わっていけるよう、正しい知識を身につけていきましょう。今回は、食べる力を高めるための、食べ物を使わないさまざまな基礎訓練についてご紹介します。

 嚥下障害 第3回 

 食べるために使う器官の多くは、息をしたり、声を出したりするときに使われる器官と重なっています。「食べる力」が衰えてくると、呼吸や発声にも問題が生じやすくなります。

 のどといわれるのは、咽頭と喉頭を合わせた部分です。咽頭は飲食物の通り道であると同時に、空気の通り道でもあります。一方、咽頭とつながる喉頭は、肺に向かう気管の入り口部分にあたる空気だけの通り道です。

 「声」は喉頭にある声帯のふるえによってつくりだされる音であり、その音を「言葉」にするためには、口全体の動き、唇や舌の動きが必要です。唇や舌を大きく動かし、はっきり話す練習は、嚥下リハビリにも役立ちます。

 のどや舌の筋力が低下すると、うまく飲み込めなくなっていきます。のどや舌のまわりの筋肉を鍛えるには、仰向けで横たわったまま頭を持ち上げる頭部拳上訓練が有用です。この運動は嚥下機能を上げ、飲み込みやすさを高めることにつながります。

 今、口から食べられている人も、積極的に筋力アップをはかっていきましょう。ただし、意外に体に負担のかかる訓練なので無理は禁物です。血圧や脈拍の上昇がいちじるしい場合や、頸椎に異常がある人は、訓練前に必ず医師に相談してください。

 ● 基本の訓練(1)

頭だけ上げ、つま先をみる姿勢を持続したあと、頭を下げて1分間休憩。これを3回くり返します。頭を上げた姿勢を何秒続けるかの決め方は、次のとおりです。

 まず、仰向けになった状態で安静時の血圧と脈拍をはかり、そのあと頭を上げた姿勢をとり、「かなりつらい」と感じたら頭を下ろします。「まだ大丈夫」と思っても1分間は超えないようにします。

 頭を下ろしたあとの血圧と脈拍を測定し、いずれも安静時より20以上上昇していなければ、頭を上げられていた秒数の半分の時間を、訓練時の持続時間とします。

 ● 基本の訓練(2)

2秒間に1回のペースで頭の上げ下ろしをくり返します。一度、この動作が何回できるか試してみます。ペースが遅くなったり疲れてきたりしたら、そこで終了です。できた回数の半分を、毎日の訓練時の回数とします。

 筋力アップの取り組みは、続けることで効果が出てきます。飲み込みに問題がなくなるまで、高齢の方は嚥下機能が改善したあとも自分で体を動かせるかぎり継続していきましょう。

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