海藻「カギケノリ」飼料、牛の「げっぷ」から温室効果ガスのメタン9割減…「世界救う日が来るかも」

AI要約

高知県大月町の公益財団法人・黒潮生物研究所が、国内の沿岸で自生する海藻「カギケノリ」を陸上で養殖し、家畜の飼料として活用するプロジェクトを民間2社と共同で取り組んでいる。

家畜が食べるとげっぷに含まれる温室効果ガスのメタンが減少し、地球温暖化防止に貢献する可能性がある。

研究所は成果を基にして昨秋プロジェクトを始動し、将来的に世界的な問題に取り組む可能性がある。

 高知県大月町の公益財団法人・黒潮生物研究所が、国内の沿岸で自生する海藻「カギケノリ」を陸上で養殖し、家畜の飼料として活用するプロジェクトを民間2社と共同で取り組んでいる。人の食用には向かないが、家畜が食べるとげっぷに含まれる温室効果ガスのメタンが減るとされる。高知発の技術で、地球温暖化防止の救世主となれるか。(広浜隆志)

 プロジェクトのきっかけは、研究所のホームページ(HP)で、カギケノリによる家畜のメタン削減効果を紹介していたことだった。

 牛や羊などは、えさを消化する際に胃の微生物の働きでメタンが生成され、げっぷで吐き出す。乳牛なら1日約500リットルにも達する。

 メタンは二酸化炭素の20~25倍の温室効果があり、人類の活動で生じる温室効果ガスのうち、牛などの家畜が吐くメタンの影響は5%にも達するという。人口の増加などで家畜の需要は高まっており、げっぷのメタンは世界的に問題となっている。

 カギケノリに豊富に含まれる成分は、メタンを生成する微生物の働きを抑えるとされる。カギケノリの粉末入り飼料を牛が食べると、メタンが9割以上減ったと海外で報告され、各国で研究が進んでいる。

 研究所のHPでは、研究所前の「スルギの浜」で採ったカギケノリを写真や動画で紹介し、「世界を救う日が来るかも」と記した。

 養殖施設建設「大成ロテック」(東京)の担当者がこれを見て関心を持ち、北海道に製造拠点がある家畜用飼料製造販売「日本甜菜(てんさい)製糖」(同)にも声をかけて昨年、研究所にプロジェクトを提案した。

 研究員の日野出賢二郎さん(36)が昨年5月、基礎研究を開始。カギケノリを容器で培養し、水温や日照時間などを変え、1か月間で最大13倍に成長させることができた。この成果を基に昨秋、プロジェクトが始動した。

 カギケノリをかじった日野出さんによると「化学薬品をしみこませたおがくずをかんでいるような不快な気分になり、吐き出した」といい、人の食用には向かないという。