「AI工場」目指すNVIDIA、データセンター設計に注力

AI要約

エヌビディアはAIファクトリーを目指し、競合他社に対抗するために幅広くサービスを提供している。

CEOのジェンスン・ファン氏は、データセンター設計能力の向上を強調し、独自の能力でAIファクトリーを構築する意向を示している。

競合他社も同様にAI構築・運用支援に注力しており、市場は様々な動きを見せている。

 米エヌビディア(NVIDIA)は、GPU(画像処理半導体)の提供だけでなく、機械学習(マシンラーニング)モデルの開発からデータセンターの設計まで、AI(人工知能)展開の全てにおいて主要技術を供給する「AIファクトリー」を目指している。競合他社がエヌビディアのシェアを奪おうと投資を拡大する中、エヌビディアもワンストップのサービスを提供することで、自社製品をより魅力的なものにしようとしている。

■ ファンCEO「AIファクトリーを構築する」

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などが報じた。報道によると、エヌビディアはAIブームの中心となる半導体の市場において支配的な地位を維持している。そしてこれらの半導体を動作させるために必要なほぼすべてのものも支配したいと考えている。

 CEO(最高経営責任者)のジェンスン・ファン氏は先の決算説明会で、エヌビディアのデータセンター設計能力が向上していることを強調した。同氏は、半導体に加えて、ソフトウエアやデータセンター設計サービス、ネットワーク技術を提供することで事業領域を拡大し、競合他社との差を広げようとしている。

 ファン氏は「当社はすべての部品を持っており、それらを統合してAIファクトリーを構築できる。これは独自の能力だ」と自信を示した。

 WSJによると、これは、AI半導体市場で80%以上とされる同社のシェアを切り崩そうとするライバルの動きに対抗する戦略だ。AIデータセンターという新たな収益源を確保することは、売り上げを増やせるだけでなく、顧客のつなぎ留めにも有効だという。

■ データセンター向け技術企業を買収

 エヌビディアは2020年にイスラエルのメラノックステクノロジーズ(Mellanox Technologies)を70億米ドル(当時の為替レートで約7700億円)で買収した。メラノックスは高速通信インターフェース「InfiniBand」に使われる半導体を手がけていた企業だ。この買収により、エヌビディアはデータセンター内高速通信技術を獲得した。

 エヌビディアは、AI向けに最適化されたイーサネットを提供する事業も展開している。加えて、様々なデータセンター機器用CPU(中央演算処理装置)やネットワークチップなどの製品を販売している。医療やロボティクスなど、特定の業界ニーズに対応したソフトウエアとハ​​ードウエアのセットアップも手がける。

■ AMDやインテルもAI構築・運用支援

 WSJによれば、米データセンター運営会社データバンクのラウル・マーティネックCEOは、ファン氏の施策について「彼は会社を垂直統合した。彼らは、AI がどうあるべきか、ユーザーが実際にAIを導入できるようにするには、どのようなソフトウエアとハ​​ードウエアが必要なのかを常に考えている」と述べた。

 一方、エヌビディアのライバルも同様の動きを見せている。米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、AMD)は24年8月19日、サーバー機器を手がける米ZTシステムズを49億ドル(約7000億円)で買収すると発表した。AMDは22年にプログラマブル半導体「FPGA」に強みを持つ米ザイリンクス(Xilinx)や、データセンターネットワーク企業の米ペンサンド・システムズ(Pensando Systems)を買収している。

 米インテルをはじめ、米セレブラス・システムズ(Cerebras Systems)や米サンバノバ・システムズ(SambaNova Systems)といったAI半導体スタートアップも、AIツールの構築・運用を希望する顧客に向けて、作業の大部分を代行するサービスやシステムを提供している。