「iPhone 16」発売、KDDIがアップルと水面下で交渉したこととは 米国でキーパーソンに聞く

AI要約

アップルのiPhone 16シリーズが9月20日に発売される。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどキャリアが大詰めの交渉を行い、競争が激化する時期だ。

KDDIの村元氏は、Apple WatchやAirPodsの新機能に注目し、周辺機器の機能が重要だと語る。また、iPhone 16シリーズについてはApple Intelligenceへの対応が期待されている。

KDDIはRCSにも注力し、Googleメッセージの標準化を進める。また、5Gスタンドアローン対応の特典を訴求することで、iPhone 16の魅力をアピールしていく考えだ。

「iPhone 16」発売、KDDIがアップルと水面下で交渉したこととは 米国でキーパーソンに聞く

 9月20日に発売となるアップルのiPhone 16シリーズ。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルにとっても、1年で最も忙しい時期を迎える。同じiPhoneという商材を4社共通で扱うだけに、いかに他社からユーザーを奪うかに知恵を絞ることになる。

 9月9日(現地時間)に開催されたスペシャルイベントでは、アップル本社横のスティーブ・ジョブズシアターにソフトバンクやKDDIのなどキャリア幹部が詰めかけていた。iPhone 16の発売に向けて、大詰めの交渉をアップルと行っているのだろう。

 今回、アップルのスペシャルイベントに初めて参加したという、KDDIのパーソナル事業本部、村元伸弥副事業本部長は、イベントの印象について「Apple watchとAirPodsについては、睡眠時間や聴覚障害の検知などの機能が気になった。日本でもすぐに機能が提供されるということはアップルとしても官庁など準備を進めてきたのだろう。iPhoneだけでなく、周辺機器の機能が供されるころで、ユーザーに対しての売り方などは工夫していかないといけない」と語る。

 確かにApple Watchはウェアラブルデバイス、AirPodsは音楽を聴くデバイスとして売れてきた。しかし、これらの機器における「健康」機能がフォーカスされてくると、これまで以上に幅広いユーザーに対して、auショップはデバイスを説明して売っていく必要が出てくる。

 一方、メインの商材となるiPhone 16シリーズについて、村元氏は「iPhone 16シリーズは今回、Apple Intelligenceが目立っているが、我々も今後、オンデバイスAIとどう向き合っていくかを考えないといけない。Googleもアップルも、スマートフォンの操作体系にAIを組み込むのが本当に上手い。『AIを使うぞ』と意識する必要がなく、自然と活用できる環境が整備されており、ユーザーも受け入れやすいのではないか」と分析する。

 今回、iPhone 16シリーズはApple Intelligenceに対応するということで、キャリアとしても大きな期待を寄せているようだ。

 村元氏は「Apple Intelligenceは、ユーザーが機種変更したいと思わせるきっかけを与えてくれるのではないか。auショップのスタッフにはApple Intelligenceの良さ、使い方をしっかりとユーザーに伝えられるようにしていきたい」という。

 確かにApple Intelligenceは魅力だが、ここ最近、「iPhoneは高い」という印象が拭えない。実際、アップルストアでは、昨年と同じ金額を維持するなど、昨今、円安基調でありながら、相当、頑張った為替レートを適用して、何とか価格を維持しようと頑張っている。

 一方で、キャリアはもっとユーザーが手軽に買い換えられるプログラムを用意できないものなのか。

 村元氏は「売り方も含めて、買い換えやすさを工夫していこうと考えている。期待して待っていてほしい。他社がやっている(1年で機種変更できる)売り方に限らず、どういうかたちがユーザーの負担なく買えるか調査している。独自に考えていきたい」と語る。

■ RCSに関するKDDIの考え

 4社が同じiPhoneを扱う中で、キャリアが他社に勝っていくには「料金プラン」や「サービス」「ネットワーク品質」をいかに磨き上げていくかが重要になっている。

 今回、iOS 18で注目されているのがRCSだ。iOS 18がRCSに対応することで、Androidユーザーと無料で写真付きのメッセージなどを標準のメッセージアプリでやりとりすることが可能となる。KDDIではいち早く、AndroidスマートフォンにおいてRCSが使える「Googleメッセージ」を標準アプリにすると表明している。

 実際、iPhoneでもRCSを受信できるようにするにはキャリア側の対応も必要だ。

 村元氏は「KDDIとしても検討している。国内のレギュレーションも海外と違ってあるので、調整をしている。時期は明言はできないが、なるべく早く届けられるように準備している」と語る。

 iOS 18でRCSに対応することで、iPhone、Androidを問わず、標準アプリでメッセージを受信できるようになる。海外でRCSが導入された際には企業からのダイレクトメッセージツールとして期待されてきた面がある。

 KDDIとしても、企業が使えるメッセージツールとしてRCSを担ぐ考えはあるのだろうか。

 村元氏は「いまは具体的に決まっているものはないが、コンシューマー向けだけでなく、企業のマーケティングツールに活用できるのは間違いない。AIと掛け合わせて、適切に企業がユーザーにコミュニケーションできる環境を整備できるよう社内で検討している」

■ 気になる「+メッセージ」

 一方、気になるのが、これまで一生懸命、3キャリアで手を取り合って普及に努めてきた「+メッセージ」の存在だ。RCSの登場により、+メッセージは「お役御免」になってしまうのか。

 「+メッセージは他キャリアと引き続き取り組んでいく。一方で、RCSという新しいOS間のコミュニケーションが広がり、選択肢が増えるというのは良いことではないか」(村元氏)。

 実はKDDIでは、今回のiPhone 16発売に向けて、アップルと水面下で交渉を続けてきたことがあるという。

 「au回線でiPhone 16シリーズを使うと、【5G スタンドアローン】がデフォルトでオンになる」(村元氏)というのだ。

 KDDIでは現在、Sub6による5Gエリアを拡大しているが、なかでも5G SAのエリアであれば「通常は300Mbps程度の通信速度の場所でもさらに100Mbps以上、高速化が期待できる」(広報担当者)という。

 つまり、au回線でiPhone 16シリーズを使うと何も設定することなく、5Gスタンドアローンにつながり、いままで以上にさらに快適に通信ができる、というわけだ。

 村元氏は「iPhone 16とau回線で、我々のSub6を今まで以上に快適に体感できるようになる。Sub6エリアは、僕らが調査している中でも特に通信品質の評価が上がっている」と胸を張る。

 さらに村元氏は「RCS、Sub6、さらに年内には始まるスターリンク衛星との直接通信もスペースXとアップルを含めて、技術検証をやるべく具体的に動き出している。KDDIが先行する強みを掛け合わせて、我々の回線でiPhone 16を使ってもらえるような違いを見せていきたい」という。