「生成AIの精度はそれほど高くない」と誤解している人が陥る“残念すぎる結末”

AI要約

AIの急速な進化により、人間の仕事が奪われる懸念が高まっている。一部の企業ではAI導入によるレイオフが報告されており、AIによる労働市場の影響が懸念されている。

大企業ではAI導入の流れが加速し、自動化される業務が増えている。企業のAI導入計画により、今後は多くの業務が自動化される可能性がある。

最新のAI技術では、企業の財務諸表分析などの業務を人間を上回る性能で遂行することが可能となっており、AIの進化による影響がますます顕著になっている。

「生成AIの精度はそれほど高くない」と誤解している人が陥る“残念すぎる結末”

 繰り返し言われていることだが、AIの急速な進化により、人間の仕事が奪われるのではないかという懸念がこれまでにないほど高まっている。ChatGPTが登場した2022年11月時点では、生成AIの精度はそれほど高くなく、企業での導入は限定的とみられていた。そのため、このときのイメージを引きずっている人は少なくない。一方、グーグルやセールスフォース、言語学習アプリDuolingoなど、すでに一部の企業ではAIの影響でレイオフが実施されるケースも報告されており、現状を改めて再確認する必要がある。本記事では、AIによる労働市場の影響を改めて占ってみたい。

 これまでもAIによる雇用喪失懸念は繰り返し議論されてきたが、懸念の声はさらに増大している。大企業におけるAI導入の流れが加速していることも、懸念増大の要因となっている。

 CNN(2024年6月20日)が報じたデューク大学の調査によると、米大企業の61%が今後1年以内にAIを導入し、これまで従業員が行っていた業務を自動化する計画であることが明らかになった。サプライヤーへの支払い、請求書作成、財務報告など、幅広い業務の自動化が計画されている。

 ChatGPTが登場した2022年11月時点では、生成AIの精度はそれほど高くなく、企業での導入は限定的だった。しかしその後、生成AIは急速な発展を見せ、最近では特定領域において人間に近いパフォーマンスを発揮できるところまで進化を遂げた。精度の大幅な向上により、当初はAI導入を躊躇っていた企業でも、導入を進めるケースが増えているのだ。

 シカゴ大学研究者らによる論文でも、生成AIのポテンシャルの高さが示されたところ。

 シカゴ大学の研究チームは、OpenAIが開発した最新の大規模言語モデル(LLM)であるGPT-4を使用して、企業の財務諸表分析を行う実験を実施。その結果、GPT-4は将来の収益成長を予測する能力において、人間のアナリストを上回る性能を示したというのだ。

 特筆すべきは、GPT-4がこの高い性能を発揮したのが、標準化された匿名の貸借対照表と損益計算書のみを与えられた状況だったこと。つまり、テキストによる文脈情報が一切ない状態でも、GPT-4は高度な分析を行うことができたのである。

 研究チームは、GPT-4に「思考の連鎖」と呼ばれるプロンプトを与えることで、人間の金融アナリストの分析プロセスを模倣させた。この手法により、GPT-4は傾向の特定、比率の計算、情報の統合を行い、予測を形成することができた。

 その結果、GPT-4は将来収益の方向性を予測する精度において60%の正確性を達成し、人間のアナリストの予測範囲である53~57%を上回ったという。

 従来、数値分析は言語モデルが苦手とする領域であり、しばらく人間のパフォーマンスを超えることはないというのが通説だったが、今回の研究でその説が覆された格好となる。