KDDI、25年3月期Q1は増収増益 無制限プランなど人気で通信収入増

AI要約

KDDIは2025年3月期第1四半期決算を発表し、増収増益の滑り出しを報告した。

売上高や営業利益が前年同期比で増加し、マルチブランド通信ARPU収入やビジネス領域が堅調だった。

さらに無制限・大容量プランの人気やビジネス領域での二桁成長が報告された。

KDDI、25年3月期Q1は増収増益 無制限プランなど人気で通信収入増

 KDDIは2025年3月期第1四半期決算を発表した。売上高は1兆3891億円。営業利益は2770億円。前年同期比でそれぞれ+4.2%、+3.9%の増収増益の滑り出しとなった。

■ 増収増益でスタート

 マルチブランド通信ARPU収入が29億円増。金融エネルギー分野やローソン持分法利益のほかビジネス領域も堅調で増益に貢献した。一方でグループMVNO収入や楽天ローミング収入は62億円減だった。

 通信収入ARPUは2023年3月期第1四半期以来の高水準を記録。auの解約率は非開示なものの髙橋誠社長によれば0.5%~1%の間。マルチブランドで見れば1.11%で若干の上昇傾向が見られるが、これはUQ mobileの解約が増えたことによるという。

■ 無制限・大容量プランの人気高まる

 ブランド別のARPUではauが+3%程度、UQ mobileが+8%ほどとそれぞれ成長した。auでは多くのユーザーが使い放題プランを選んでおり、UQ mobileでも中~大容量プランが選ばれる率が高い。UQ mobileからauへの移行数は前年同期比で約2.2倍となった。

 UQ mobileの解約率は上昇傾向なものの、2024年3月期第4四半期から見ると下がりつつはあるという。髙橋氏は短期での解約が多い傾向にあるSIM単体契約が増えていることを紹介し、結果的にマルチブランド解約率の上昇につながっていると説明した。

 Sub6基地局数はトップで、およそ3万9000局がすでに開局済み。2周波数に対応するMassive MIMOを国内で初めて導入するなど、品質向上を進める。

 2023年に提供を始めた「auマネ活プラン」は、100万契約を突破。そのほかの使い放題プランと比較して解約率は2割ほど改善、通信ARPUは約1割ほど伸びているという。auじぶん銀行の口座保有率も他プランの契約者と比較しても高く、預金残高や貸出残高も伸びるなどauじぶん銀行の成長にも貢献している。

■ 二桁成長のビジネス領域

 ビジネス領域では、IoTやデータセンター、デジタルBPO(主にコールセンター)がいずれも二桁成長を示すなど伸長した。

 IoTの累計回線数は4416万回線で年平均成長率は29.8%で、データの収集活用に向けたユーザー接点の拡大が進んでいるとされた。

 パートナー企業とともに物流倉庫のDX化で新会社を設立。今後「Altius ONE」を通じてユーザー企業のDX支援を進めるとともにELYZAなどとの連携でデジタルBPOサービスの高度化を進める。

■ 質疑応答

――マルチブランド解約率の上昇はUQ mobileの影響か?

髙橋氏

 auの(解約率)がフラットでマルチブランドは上がっていますから、UQ mobileの解約率が上がっていると思っていただいて結構です。2024年3月期第4四半期から見れば少し下降傾向にはあります。

 UQ mobile全体で解約率が上がっているわけではなく、SIM単体の契約が(契約の増前を)結構左右しているようです。SIM単体で入っていただいた方が短期で解約して移動していく形になってます。健全かどうかという話はちょっと置いておいて、そこが影響してマルチブランドの解約率が少し上がっています。

 SIM除きのところではそれよりも少し下がっている数字なのでマルチブランドの解約率1.11%が今、大問題かというとSIM単体の流動性のところを見ながらやっていくということです。

――NTTドコモが「eximo ポイ活」、ソフトバンクが「ペイトク」を始めている一方、決済に連動するプランがKDDIにはない。

髙橋氏

 ドコモが金融に力を入れて通信と金融の連携プランを出してきたのは、我々としてもこういう領域が競争領域として意識してもらえているということなので、良いことと思います。

 我々は銀行からクレジットまで金融事業を全部持っていて、こういうものをどこまでauマネ活プランに入れるのかというふうな拡大の戦略になりますので、この中に決済を今後入れていくかどうかも視野に入っています。

――auマネ活プランが始まって1年だが、12カ月限定でポイントアップという施策があるが今後どうなるのか?

髙橋氏

 非常にご好評いただいておりますので、ブラッシュアップしていかなくてはいけないのかなと思います。決まったことはないので今日の段階でコメントは差し控えさせていただきます。

――楽天モバイルがプラチナバンドをアピールしている。しかし積極的な設備投資はしていないようだが影響は?

髙橋氏

 他社の設備投資の話なので……。ただ免許の状況を見ると、それほど積極的にプラチナバンドの投資をされているようには見えません。そこについては「あれだけアピールされている割には投資がされないのだな」という印象です。

 (楽天モバイルが)非常に好調ということで、750万加入を超えたということなので、純増ペースが結構速いなと。注目しなくてはいけないと思っています。我々からの流出の状況をみてもそんなに大きく変化がないんですよね。

 分析してみると、データ使用量の少ないSIM単体のユーザーの流動が少し楽天モバイルに出ているかなという感じがして、あまり大きな影響にはなっていません。流動性がこの状況で、あれだけ短期間に数字が上がっているというのは若干……本当は違和感を感じていてそのあたりは我々としてはしっかり見ていかなくてはいけないと思っています。

 やはりSIM単体の販売でだいぶ(契約数の)数字が動くので、単純に純増数だけで見るのではなくてもう少し付加価値のある回線なのか、このあたりを見ながら戦略を打っていかなくてはいけないと思います。

――auカブコム証券における新NISA開始やauマネ活プランの影響を教えてほしい

髙橋氏

 銀行やクレジットの伸びに比べるとまだそこまで大きくありません。ここについては少し手を入れていかなくてはと思っています。MUFGとも議論しており、auカブコム証券の強化について力を入れていただけると聞いています。

――NTTの固定電話サービス撤退の容認や携帯電話をユニバーサルサービスに位置づけるかが総務省で議論されている。受け止めを教えてほしい。

髙橋氏

 当社の意見も聞いていただき、WGのなかでも主張させてもらい、論点のなかにはしっかり上げていただきました。NTT東西の設備は安定的な通信の提供の確保に極めて重要でその規律のあり方が議論の対象と考えています。

 我々のスタンスはNTT法の強化が必要というもの。インフラ基盤の電柱、管路、洞道、局舎の確保・維持は非常に重要だということがあります。メタル電話の時代から光ブロードバンドにあわせて、NTTの公共的役割をアップデートして、光回線の提供責任を負っていただかなくてはいけません。NTTグループ再編についても認可などの担保措置の強化が必要です。

 国民の生活に大きな影響を与える大変重要な議論。本日の総務大臣の会見で、NTTの公共的な立場は明確にしなくてはいけないし、一方で国際的にも活躍できるNTTにと両輪を大事にした法整備をされていくということだったので、これからも主張・議論していきます。

――通信事業者としてAI投資はどう進めていくのか?

髙橋氏

 まずは計算基盤は1000億円を投資します。堺(大阪府 シャープ工場跡)のデータセンター(を作る)の話をしましたが、多摩(東京都)にも大きなデータセンターがあります。横が空き地なんですが、そこにも新棟を建てることを今月決めました。

 AIの活用については社内ではかなり進んでいます。「Copilot」中心に社員の8割以上が生成AIを毎日活用していますので、社員の教育は進んでいます。活用はデジタルBPOをカスタマーケアに使うのが最優先。2つ目はオープンソースのモデルをベースにファインチューニングで領域別のLLMを作っていこうとしています。ワコンクロスは領域が分かれていますが、領域別にチューニングしてワコンクロスの中にバンドルしてユーザーに提供します。

 3つ目は通信にどう活用するかです。ひとつはオペレーションに組み込むこと。ゼロタッチオペレーションなどAIを活用して自動化を図ります。これからはオンデバイスのAIが大事になるでしょう。クラウドとオンデバイスはどういう比率で使えばいいのかが、結構奥の深いところです。すごく大事になるところで、ネットワークのコアやエッジ側のレイテンシーを非常に大事にする領域とオンデバイスAIとがどう組み合わせるかが差別化のポイント。オンデバイスのAIも少し見ていく必要があると思っています。