世界の中心でクイを食べる~キト(前編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】

AI要約

コロナ禍が始まって以降、初めてのアメリカ出張を機に、ラテンアメリカ・エクアドルまで訪れることになった。

訪れる前から準備を始め、エクアドルの通貨や食べ物、そしてその国についての予備知識を調べる。

エクアドルに到着した時は、片道27時間の長旅だったが、研究者パウルとの共同研究に期待を寄せる。

世界の中心でクイを食べる~キト(前編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】

連載【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】第58話

コロナ禍が始まって以降、初めてのアメリカ出張。ラテンアメリカ・エクアドルまで足を伸ばし、G2P-Japanで共同研究した研究者を訪ねることにした。

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■ラテンアメリカ・エクアドルへ

2023年10月、カリフォルニア州で開催される研究集会に参加するために、ひさしぶりにアメリカに出張することになった。コロナ禍が始まって以降、初めての訪米である。

せっかくの機会なので、ラテンアメリカ(南米)まで少し足を伸ばすことにした。2020年春の新型コロナ研究処女作(38話)や、G2P-Japanのラムダ株とミュー株の研究(45話)で連携したことがある、パウル・カルデナス(Paúl Cárdenas)に会うためである。

パウルとは、2021年のミュー株の研究(45話)がひと段落した後も折々にやりとりを続けていて、新型コロナだけではなく、いろいろなウイルスの共同研究の可能性について、メールで議論を重ねていた。それがある程度煮詰まってきたところもあるし、対面で話を詰めるにはちょうど良い頃合いだと考えた訳である。

パウルは、エクアドルの首都・キトという街にある、サンフランシスコ・デ・キト大学というところに在籍している。私にとって、初めてのラテンアメリカである。

■片道27時間(!)、キトに到着

出発の数日前くらいから、ぽつぽつと準備を始める。どこで外貨両替をしよう? というかそもそも、エクアドルの通貨ってなんだろう? そう思ってネットで調べてみると、なんとエクアドルでは、アメリカドルが使われていた。

これまでの出張旅行記からもおわかりかと思うが、私は訪れた国や街の食べ物を食すことを、海外出張の楽しみのひとつにしている。これもネットで調べてみる。......ロクロ、トストーネ、カングレホ、アロス・コン・ポジョ、チフレ、セビーチェ、そして、クイ。セビーチェくらいは聞いたことがあるようなないような?、くらいの、名前からはほとんどイメージが湧かない料理ばかり。とりあえず料理の名前だけメモしておく。

考えてみれば、エクアドルという国について、予備知識がほとんどないことに気づいた。思いつくところとしては、バナナと、ガラパゴス諸島と、一昨年(2022年)のサッカーW杯で日本と引き分けた国であるということ。スペイン語を話す。それと、国の名前が「赤道(equator)」に由来することから、おそらく赤道直下にある国なのだろう、ということくらい。そして、ネットでぽつぽつと調べてみると、「とりあえず治安悪い」みたいな情報が散見されるではないか。