イーサリアムのヘッジ取引が活発化──現物ETFの取引開始に備えて

AI要約

イーサリアム(ETH)の現物価格に連動する上場投資信託(ETF)のアメリカでのデビューが迫り、投資家は価格変動からの保護を求めオプション市場に殺到している。

短期の契約において、オプション市場のインプライド・ボラティリティが急上昇しており、トレーダーの不透明感が高まっている。イーサリアムとビットコインのボラティリティ差も拡大している。

イーサリアム現物ETFが取引開始される期待が高まっており、ヘッジ取引の増加はその強気な期待と一致している。

イーサリアムのヘッジ取引が活発化──現物ETFの取引開始に備えて

イーサリアム(ETH)の現物価格に連動す上場投資信託(ETF)のアメリカでのデビューが迫っているため、投資家は価格変動から既存の市場ポジションをヘッジするためにオプション市場に殺到している。

デリビット(Deribit)とカイコ(Kaiko)によると、インプライド・ボラティリティ(IV)と呼ばれる特定の期間における価格変動に対するオプション市場の見通しは、あらゆる時間軸で上昇している。これは、価格変動に対する保護を提供するオプションやデリバティブに対する需要が高まっていることを示している。コールオプションは価格上昇に対する保護を提供し、プットオプションは価格下落に対する保険となる。

ヘッジ活動は短期の契約でより顕著になっており、7月19日満期のオプション契約が7月26日満期のオプション契約に比べてインプライド・ボラティリティが最近相対的に高いことからもそれがわかる。カイコによると、7月19日に満期を迎えるオプションのIVは、13日の53%から15日には62%に上昇し、7月26日に満期を迎えるオプションのIVを上回った。

「7月19日満期の契約のIVの上昇は、トレーダーが既存のポジションをヘッジし、短期的な急激な価格変動から身を守るために、より高い金額を支払う意思があることを示唆している。 短期の契約のIVの急上昇は、トレーダーの間で不透明感が高まっていることを示している」と、カイコのアナリストは15日のニュースレターで述べている。

また、トレーダーはイーサリアムがビットコイン(BTC)と比較してもボラティリティが高まることを予想している。アンバーデータ(Amberdata)によると、暗号資産(仮想通貨)オプション取引所のデリビット(Deribit)のイーサリアムとビットコインの30日インプライド・ボラティリティ指数(BTC DVOLとETH DVOL)の差は、5月下旬以降、一貫して平均10%前後で推移しており、第1四半期の5%を大きく上回っている。

暗号資産取引所バイビット(Bybit) と分析会社のBlockScholes も、15日にCoinDeskと共有したレポートで同様の見解を示している。

「主な調査結果によると、投資家はETHに対してますます楽観的になっており、特にアメリカで初のイーサリアム現物ETFがまもなく取引開始されるという期待が高まっていることは明らかだ。この楽観的な見方は、市場活動が活発化する中でETHのBTCに対する持続的なボラティリティプレミアムに反映されている」と報告書は述べている。

イーサリアムでのヘッジ取引の増加は、7月23日に取引が開始されると見られているイーサリアム現物ETFによる強気な期待と一致している。ジェミナイ(Gemini)によると、イーサリアム現物ETFは最初の6カ月間で50億ドル(約8000億円、1ドル=160円換算)の純流入が見込まれ、ビットコインに対するイーサリアムの市場価値を押し上げるだろう。

また、1月11日のビットコイン現物ETFのデビュー後に起こった「ニュースで売る」現象を念頭に置いたトレーダーは、イーサリアムでも同様の価格変動が起こる可能性に備えているかもしれない。

ただし、トレーダーは現在の市場のムードとイーサリアムの強気なポジションは、1月初めのビットコインよりもはるかに慎重なものであり、上場後の「ニュースを売り材料にする」反動的な下落の可能性は低いと見られている。

|翻訳:CoinDesk JAPAN|編集:井上俊彦|画像:Kaiko|原文:Ether Hedging Activity Picks Up as U.S. ETF Debut Nears