セールスフォース、製薬・医療機器メーカー向けプラットフォーム「Life Sciences Cloud」を国内で提供

AI要約

株式会社セールスフォース・ジャパンはAIを活用した製薬および医療機器メーカー向けのプラットフォーム「Life Sciences Cloud」の提供を開始した。

Life Sciences Cloudには臨床試験向けの機能や医療機器CRM、患者サービス機能などが搭載されており、AIを活用することで患者中心主義へのパラダイムシフトや治療成績の向上が期待されている。

臨床試験における患者募集の課題解決やAIの活用による効率化が進められており、臨床試験の候補者の登録管理や適格性の判断など、さまざまな機能が提供される予定である。

セールスフォース、製薬・医療機器メーカー向けプラットフォーム「Life Sciences Cloud」を国内で提供

 株式会社セールスフォース・ジャパン(セールスフォース)は12日、AIを活用した製薬および医療機器メーカー向けのプラットフォーム「Life Sciences Cloud」を国内で提供開始すると発表した。

 セールスフォース・ジャパン 執行役員 ソリューション統括本部 インダストリーアドバイザー本部 本部長の國本久成氏は、Life Sciences Cloudを提供する背景について、「ライフサイエンス企業は、患者と医療関係者という2つの顧客に対するエンゲージメントを、AIを活用してより進化させていく必要がある。これにより、患者中心主義へのパラダイムシフトが進み、AIによるパーソナライズされたケア、そして治療成績の向上へとつながる」と説明する。

 Life Sciences Cloudには、同社にとって初の領域となる臨床試験向けの機能や、ライフサイエンス企業と患者および医療関係者とのエンゲージメントを向上させる医療機器CRM、患者の治療をサポートする患者サービス機能などが搭載されている。2025年9月には、製薬企業が医師とのエンゲージメントを高めるためのファーマCRMといった機能もリリース予定だ。

 同ソリューションにはAIが組み込まれている。國本氏は、「臨床試験、医療情報管理、販売後や承認後といった分野において、Life Sciences CloudをベースにAIを活用できるようなユースケースを、顧客とともに考えながら機能実装を進める」としている。

 臨床試験における課題について國本氏は、「患者の募集には多大なコストが発生するほか、80%の臨床試験は必要な患者数を集められずにスケジュールが遅れている」と話す。「こうした課題をセールスフォースのアジャイル思考と、データ、そしてAIによって解決していきたい」と國本氏。

 臨床試験向けの機能は、「参加登録の合理化」「研究プロセスの最適化」「治験施設の効率的な管理」「臨床業務の接続」というテーマに沿って開発を進めているという。その中で、患者の登録や臨床試験への患者の組み込みを支援する機能を複数用意した。

 そのひとつが、顧客体験を構築する「Experience Cloud」を用いたリクルートポータルの強化だ。これにより、臨床試験の情報を検索できるポータルサイトを容易に立ち上げることが可能となり、「ポータルを通じて臨床試験への参加を希望する患者を集めることができるだけでなく、臨床試験を実施したい医師が試験責任医師として参加登録することもできる」という。

 臨床試験の候補となる患者の登録を管理する機能も準備している。中でも「e-Consent」機能は、臨床試験への参加の同意を、サインによる署名またはユーザー認証として取得できる機能。これまで紙ベースだった同意の取得をデジタル化することで、効率的に管理できるようになる。

 参加登録した患者が臨床試験に適合しているか自動判定する機能は今年10月にリリースする。非構造化データと構造化データを統合し、AIを使用することで、患者の適格性を自動で判断、患者リストを作成するという。

 候補者の登録ライフサイクルを管理する機能も用意した。臨床試験候補者のスクリーニングから、募集、登録までのプロセスを管理し、「候補者を公正かつ公平な方法で治療群や比較群に無作為に割り当てるランダム化にも対応している」(國本氏)という。

 國本氏は、「さまざまなパートナーとともに、病気で苦しむ患者に1日でも早く新薬や医療機器が届けられるよう支援していきたい」と述べた。