テレビ復活か? パリ五輪直前で販売が活性化【道越一郎のカットエッジ】

AI要約

テレビの販売が回復し始め、販売金額と販売台数が前年を上回る状況が続いている。

特に液晶テレビの販売が急拡大し、シャープやTVS REGZAがシェアを伸ばしている。

コロナ禍の影響や有機ELテレビの低調な売り上げなど、市場の動向が詳細に報告されている。

テレビ復活か? パリ五輪直前で販売が活性化【道越一郎のカットエッジ】

 テレビの販売が回復し始めた。この6月、2020年3月以来4年3カ月ぶりに、販売金額前年比が2桁増の110.4%を記録。円安に伴うインフレで平均単価が上昇しているのが一因だ。しかし、販売台数も106.3%と増加してきた。このところマイナス基調で推移していたテレビ市場に明かりが見え始めている。全国2400店舗の家電量販店やネットショップなどの実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。

 テレビの販売が、台数、金額ともそろって前年を上回ったのは、昨年11月、この3月に続き、過去1年では3回目。中でも今回は伸び率が最も高く、販売金額は、久々の2桁増を記録した。特に伸びが大きいのが液晶テレビだ。この6月で台数108.7%、金額で115.2%と大きく伸びている。さらに、販売金額ではこの2月以降、5カ月連続で前年を上回って推移している。液晶テレビの販売構成比は、6月現在で台数88.6%、金額で77.2%。大多数を占める液晶テレビの販売が伸び、市場全体を押し上げた。一方、有機ELテレビはマイナス基調が続いており、この1年で前年を上回ったのは昨年11月のみ。この6月も台数89.4%、金額97.0%と大きく前年を下回った。

 

 コロナ禍以降、テレビ市場の勢力図は大きく変化した。この6月の販売台数トップは、シェア23.8%でTVS REGZAだった。2位がシャープで22.6%。し烈なトップシェア争いが繰り広げられている。3位につけているのが中国メーカーHisense。16.7%までジリジリとシェアを上げてきた。TVS REGZAの親会社でもある同社は、価格の安さを武器に勢力を拡大している。以下、ソニー、パナソニックが10%前後という状況だ。3年前の21年6月に目を転じると、台数シェア21.1%で1位のシャープに、2位ソニーが20.1%で絡む展開。翌7月にはソニーが21.5%でトップシェアを獲得する場面もあった。パナソニックも東京オリンピック特需を背景に16.5%を記録。上位陣に名を連ねていた。

 

 販売金額シェアを見ると、若干風景が変わる。この6月のトップは24.4%のシャープだ。液晶偏重から有機ELもラインアップに加え、大型モデルを重視する戦略が奏功している。2位が23.2%のTVS REGZAだ。台数と同じくシャープとトップを争っている。リーズナブル路線を行く同社。金額ベースではシャープの後塵を拝する月も散見される。さらにこの2社に絡んでいるのが22.0%のソニーだ。プレミアムな大型モデルを中心とした展開で、販売金額を稼いでいる。そして、やや水をあけられつつ、シェア13.5%で4位を走るのがパナソニックだ。同社はテレビ全体では伸び悩んでいるものの有機ELでは強い。6月の有機ELテレビでは、販売台数こそ2位だが、販売金額シェアでは28.5%とトップだった。3年前、2011年の6月の販売金額では、ソニーが32.2%と圧倒的なシェアで1位を走っていた。2位が22.3%のパナソニックだった。シャープは18.2%、TVS REGZAに至っては12.9%しかなかった。

 メーカー別の前年比では、このところ最も伸びているのがHisenseだ。昨年10月以降9カ月連続で、台数、金額のいずれもが前年を上回っており絶好調。特にこの6月は台数140.1%、金額でも147.5%と大幅に伸びている。一方、前年割れが続いているのはソニーだ。22年6月以降、台数、金額の両方で前年割れが継続。この6月では、台数95.4%、金額98.7%と回復の兆しはあるものの、あと一歩で足踏みしている。かつて同社は、有機ELで圧倒的なシェアを保持していた。しかし、有機ELテレビは、高単価であることに加え、電気代の高騰から消費電力の大きさが、デメリットとしてとらえられるようになってきた。有機ELテレビの販売構成比は低下の傾向にある。こうした要因も、ソニーの販売縮小につながっているといえるだろう。

 パリ五輪も近づいてきた。コロナ禍で、東京五輪は1年延期の末、無観客開催を余儀なくされた。この影響で、五輪が社会に与えるインパクトは著しく低下した感がある。フルスペック開催に戻る今回、勢いをどこまで取り戻せるだろうか。過去の例から、世界的なスポーツイベントがテレビの販売に与える影響はそれほど大きくないことが分かっている。しかし、今回の五輪がテレビや関連商品の販売にどこまで寄与するか、改めて注目してみたい。(BCN・道越一郎)