中国か、中国以外か サプライチェーンの二分化が進む

AI要約

半導体サプライチェーンは地理的な多様化が進み、中国国内と中国以外に分かれつつある。

VISとNXPがシンガポールに新工場を建設し、300mmウエハーでミックスドシグナルやアナログ製品を生産予定。

中国以外の顧客からの需要増大や地政学的緊張により、サプライチェーンの変化が進む中、VISの動きはタイムリーだと言える。

中国か、中国以外か サプライチェーンの二分化が進む

 半導体サプライチェーンは現在、地政学的理由やパンデミックの教訓から、地理的な多様化が加速し続けている。専門家は、その結果として世界の半導体サプライチェーンが主に「中国国内」「中国以外」の2つに分かれたと分析している。台湾の市場調査会社TrendForceによれば、最近米国が中国製品に対する関税を引き上げたことで、こうした移行がさらに進んでいるという。

 その例となるのが2024年6月、Vanguard International Semiconductor(以下、VIS)とNXP Semiconductors(以下、NXP)がシンガポールに300mmウエハー工場を建設すると発表したことだ。TrendForceはこの動きについて、「台湾メーカーがサプライチェーン多様化のために海外進出を加速させると同時に、グローバルサプライチェーンが『Out of China, Out of Taiwan』(脱中国、脱台湾)へと移行している傾向を反映したものだ」と指摘している。

 Center for Strategic and International Studiesによると、多様な国々にサプライチェーンを分散させると、実際に自然災害や政治的要因によるリスクを低減することが可能だという。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、エレクトロニクス製造の中心地としての中国に世界全体が過度に依存していることが露呈した。

 VIS/NXPのシンガポールの300mmウエハー対応新工場では、130nmから40nmのプロセス技術を用いミックスドシグナルやパワーマネジメント、アナログ製品を生産する予定だ。最終市場としては自動車や産業、民生機器などをターゲットに定めている。基本的なプロセス技術については、TSMCがVISとNXPによる合弁会社にライセンス供与と技術移転を行う予定だという。

 VISとNXPのプレスリリースによると、このウエハー工場は、2024年後半に初期フェーズの建設を始め、2027年には生産を開始する見込みだという。また、この合弁会社は独立したファウンドリとして稼働し、VISとNXPそれぞれに相応の生産能力を提供する予定だ。2029年には、300mmウエハーの生産能力が月産5万5000枚に達する見込みだという。

 VISは現在台湾で4カ所、シンガポールで1カ所の200mmウエハー工場を稼働している。設備の老朽化や300mmへの移行トレンドもあって、世界の200mmウエハー生産能力は現在それほど増加していないため、VISは、中国のコスト効率の高い300mmウエハー工場との間で競争激化に直面している。TrendForceによると、300mmへの移行により、200mmウエハー市場における長期的な需要見通しが悪化し、市場への影響力が弱まったことから、VISは300mmウエハー市場への参入を余儀なくされたのだという。

 さらに地政学的な緊張により、中国以外の顧客から、中国/台湾以外の生産拠点に対する需要が増大している。VISのシンガポール新工場の発表は、このような市場の変化に合致し、非常にタイムリーだったといえる。