日本オラクル社長が説く「AI搭載SaaSの差別化ポイント」とは

AI要約

日本オラクルの三澤智光氏が、AIが業務アプリケーションを進化させる重要性について語る。

三澤氏は、SaaSベンダーとして自社クラウド基盤を活用することの重要性を強調し、競争力を維持する方針を示した。

記事は、SaaSとマルチクラウド基盤の連携における技術革新の可能性にも触れている。

日本オラクル社長が説く「AI搭載SaaSの差別化ポイント」とは

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏と、伊藤忠テクノソリューションズ 常務執行役員 デジタルサービス事業グループ担当役員の藤岡良樹氏の「明言」を紹介する。

「これからはAIが業務アプリケーションをどんどん進化させていく」

(日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏)

 日本オラクルは先頃、2025年度(2025年5月期)の事業戦略について都内ホテルで記者説明会を開いた。三澤氏の冒頭の発言はその会見で、SaaSとして提供する業務アプリケーションとAIの関係について述べたものである。

 会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは三澤氏の冒頭の発言に注目したい。

 会見に臨んだ三澤氏は、2025年度の日本オラクルの重点施策として「日本のためのクラウドを提供」と「お客さまのためのAIを推進」の2つを挙げた。さらに、後者の具体的な取り組みとして「圧倒的なGPU環境を日本のAIに提供」「エンタープライズ向け生成AIソリューションの展開」「SaaSに組み込まれたAI活用を推進」の3つを挙げた。同氏の冒頭の発言は、3つ目のSaaSに組み込まれたAI活用についての話である。

 三澤氏は図1を示しながら、次のように述べた。

 「業務アプリケーションが今後、どの領域で大きく変わっていくかというと、業務プロセスを効率化していくところというより、AIを業務プロセスに組み込むことによって、業務アプリケーションそのものがどんどん進化していく形になるだろう。そんな新しい時代を迎えている中で、競合他社の業務アプリケーションの動作環境を見ると、クラウド基盤やその中核となるGPUおよびAIサービスにおいて全て外部の他社製のものを使っているケースが多い。それで、AIを搭載したSaaSとして果たしてコスト競争力を発揮できるのか」

 このように問題提起した同氏は、同社としての取り組みを次のように説明した。

 「コスト競争力を発揮していくためには、クラウド基盤やその中核となるGPUおよびAIサービスにおいてSaaSベンダーとして全て自社の動作環境で提供するのが必然だ。それが当社のSaaSの確固たるアドバンテージであり、さらに進化するSaaSをお客さまに提供していくことができる当社ならではの差別化ポイントだ」

 改めて図1をご覧いただければ、要はSaaSの基盤として「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)があるかどうかの違いである。

 三澤氏が指摘するように、SaaSベンダーの多くはクラウド基盤として自社製だけでなく他社製のサービスを適用しているケースが多い。そうした中でSaaSにAIを搭載するならば、そのAIの能力を最大限に引き出せるクラウド基盤と一体化している方が、コストパフォーマンスとして優れていることは容易に想像がつく。

 ただ、同社は主力の「Oracle Database」の動作環境として、OCIだけでなく「Microsoft Azure」や「Google Cloud Platform」でも利用できるマルチクラウド戦略を推進している。これは、Oracle Databaseの本来の特徴である「ポータブルな利用環境」を踏襲したものだと、筆者は解釈している。その目的はひとえにOracle Databaseをもっと多くのユーザーに使ってもらうためだ。

 この考え方が、SaaSにも当てはまらないか。これは同社に限った話ではなく、今後のSaaSの在り方の問題だ。SaaSとマルチクラウド基盤の連携における技術革新にも注目したい。