日本に向けたクラウドとAIに引き続き注力--日本オラクル、2025年度の事業戦略を発表

AI要約

2025会計年度の事業戦略説明会で三澤智光氏が、2024年度の事業概況と2025年度の重点施策を説明。

2025年度の重点施策は日本のためのクラウドの提供と顧客のためのAIの推進。具体的には4つの取り組みや3つのAI推進ポイントが示された。

クラウド基盤やGPU環境を活用し、日本市場での成果や展望についても具体的な事例が紹介された。

日本に向けたクラウドとAIに引き続き注力--日本オラクル、2025年度の事業戦略を発表

 日本オラクルは7月9日、2025会計年度の事業戦略説明会を開催。取締役 執行役 社長の三澤智光氏が、新年度の重点施策などを明らかにした。

 三澤氏はまず、2024会計年度の事業概況を説明した。グローバルの通期売上高は前年比6%増の530億ドル、第4四半期が前年同期比4%増の143億ドルだった。クラウド関連のビジネスは第4四半期に20%増となり、内訳としてはIaaS/PaaSが42%増、SaaSが10%増だった。

 国内の通期売上高については、前年比7.8%増で「過去最高」(同氏)だったとし、2024会計年度に掲げた重点施策の「日本のためのクラウドの提供」と「顧客のためのAIの推進」について「それなりの良い成果が出た」(三澤氏)と振り返った。

 その上で、2025会計年度も引き続き、この2つを重点施策として位置付けた。1つ目の「日本のためのクラウドの提供」では、(1)レガシーモダナイゼーションによる基幹システムのレジリエンス向上、(2)顧客、パートナー向けの専用クラウドを提供、(3)ガバメントクラウド以降のさらなる推進、(4)クラウドネイティブSaaSの普及による経営基盤の強化――の4つに取り組む。

 (1)では、サイバー攻撃や地政学リスク、自然災害など、予期せぬ事態が発生しても事業継続を可能にする基幹システムの必要性が増大しているといい、例えば、ほとんどのセキュリティ脅威の問題はパッチの適用やシステムのアップグレード、設定ミスの検知と自動修復で事前防御が可能であると、三澤氏は指摘。日立建機では、基幹システムの基盤を「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)で刷新することで、オンプレミスの「VMware」仮想化環境にあった約500のアプリケーションサーバーと約100のデータベースを「Oracle Cloud VMware Solution」と「Oracle Exadata Cloud Service」に移行した。

 これにより同社は、従来のオンプレミスの複雑なインフラ環境から脱却し、定期的なパッチ適用やアップグレードが実施可能になった。また、災害復旧(DR)環境を低コストに構築し、運用コストを20%削減、処理性能を最大50%向上させたという。

 BroadcomによるVMwareの買収でニーズが高まっているのが、Oracle Cloud VMware Solutionである。複数年にわたって価格固定で利用でき、オンプレミスのVMware仮想化環境をそのままクラウドに移行して、これまでと同じように運用できるのが特徴だという。移行を支援するサービスやツールを無償で提供しており、パートナーとの協業も強化していると三澤氏はアピールする。

 (2)については、データ主権やソブリンクラウドの要件に対応するため、顧客やパートナー向けに専用のクラウド環境を提供する。OCIの仕組みをパートナーやユーザーが自前のデータセンターに導入して自らも運用できる「Oracle Dedicated Region」や「Oracle Alloy」「Oracle Cloud@Customer」など、柔軟な提供形態を取りそろえる。実際、Oracle Alloyが野村総合研究所(NRI)のデータセンターで稼働を始め、富士通とは日本市場におけるデータ主権要件に対応するソブリンクラウドの提供に向けて戦略的協業を発表している。

 (3)は、20以上のソフトウェア開発企業(ISV)によるOCI展開や、政府自治体関連パートナー向けセミナーを予定する。また、数百を超える自治体がOCIの採用に動いており、多くの採用・稼働事例を公開する予定だという。2025年度末以降は生成AIの活用に向けたさらなるソリューション展開も計画する。和歌山市では、基幹業務システムのガバメントクラウド移行にOCIを採用し、2025年1月に稼働を開始する予定。日本オラクルは、紀陽情報システムと協業して、以前から和歌山市の住民情報系アプリケーションの安定稼働を支援している。紀陽情報システムは、近畿地域で20以上の自治体に標準準拠のシステムを提供する予定だといい、今後導入する自治体でもOCIの採用により、ガバメントクラウドへの移行に取り組むと表明している。

 (4)では、「企業規模や業種業界を問わず業務アプリをSaaSで導入するのが当たり前になった」といい、多くの日本の企業で既に使われていると強調した。さらに、「Oracle NetSuite」の本格展開を始めており、中小企業や新興企業の経営基盤を支えている。こちらも多くのパートナーから賛同を得られているとし、今後さらに増やしていく計画だと表明した。

 2つ目の「顧客のためのAIの推進」では、(1)圧倒的なGPU環境を日本のAIに提供、(2)エンタープライズ向け生成AIソリューションの展開、(3)SaaSに組み込まれたAI活用を推進――の3つを挙げる。

 (1)では、GPUの能力を最大化するためのクラウド基盤として「OCI Supercluster」が紹介された。高性能なベアメタルGPUサーバーを提供するもので、「NVIDIA B200」を6万5536基(予定)、「NVIDIA H100」を1万6384基まで拡張可能という。広帯域・低遅延なRDMAネットワークで複数ノード環境でもリニアにスケール可能で、高いコストパフォーマンスを実現する。ソブリンAI要件にも対応し、分散クラウドからも提供可能とする。三澤氏は、MicrosoftやOpenAIをはじめ、世界中の先進的なAI企業の多くがOCI Superclusterを採用していると強調した。

 (2)は、エンタープライズにおける生成AI、検索拡張生成(RAG)の課題を解決するマルチモーダルプラットフォームとして「Oracle Database 23ai」の「Oracle AI Vector Search」を紹介。あらゆるデータを1つのデータベースで管理でき、高速なベクトル検索と高い可用性、強固なセキュリティなどを特徴とする。

 (3)については、「今後AIが業務アプリを進化させていく」と指摘し、競合他社との違いとして、クラウド基盤、GPU環境、LLMサービスを自前で持っている点が強みだと強調した。「Oracle Fusion Cloud Applications」やOracle Netsuiteなどで既に50以上の生成AI機能を提供済みで、四半期ごとのアップデートで今後も最新AIをリリースしていくとのこと。