10月からの郵便料金値上げ、経理担当の対応は? 4社の実態調査から読み解く

AI要約

2024年10月に30年ぶりに値上げされる封書の郵便料金。企業の対応策や電子化の現状をアンケート調査から紐解く。

請求書の送付数や郵送コスト、手作業の課題、電子化の進捗状況などが明らかになった。

郵便料金値上げに対応したり、電子化を促進するためにはさらなる取り組みが必要とされている。

10月からの郵便料金値上げ、経理担当の対応は? 4社の実態調査から読み解く

2024年10月に30年ぶりに値上げされる封書の郵便料金。定形封書の郵便料金上限額が、84円から110円へと、26円(およそ30%)引き上がる。企業は対応をどう考えているのか、キヤノンマーケティングジャパン、インフォマート、Sansan、フリーの4社のアンケート調査から現状を紐解いた。

 2024年10月、30年ぶりに値上げされる封書の郵便料金。定形封書の郵便料金上限額が、84円から110円へと、26円(およそ30%)引き上がる。

 

 企業における請求書郵送の課題から値上げへの対応策、電子化の現状などを、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)、インフォマート、Sansan、フリー(freee)の4社が2024年4月以降に公表した、主に経理担当者に対する郵便料金値上げに関する「アンケート調査」から紐解いた。

 

郵便料金値上げによる追加コストは平均約108万円、郵送業務の人件費も課題

 まずは、請求書郵送の現状についてだ。

 

 キヤノンMJの調査では、年間に郵送する請求書の数は「1000通未満」が27.4%と最多の回答だった一方、「3万通以上」も13.2%と、およそ1割の企業では年間252万円以上の郵送コストが発生している現状だ。

 

 Sansanの調査では、1社あたりの請求書の郵送件数は「月平均3465件」であり、年に換算すると平均4万1580件だった。郵便料金の値上げによって、年間で“およそ108万円”の追加コストが発生することになる。

 

 紙の郵送業務に関しては、郵送作業に伴って発生する人件費や印刷費も課題である。インフォマートの調査(郵送業務全般が対象)では、郵送1通あたりにかかる作業時間は「3分~5分未満」が33.7%で最多。また、郵送業務の課題について聞いたところ、「印紙代・郵送代・印刷代などのコスト」がトップ(44.9%)で、以下「切手や印紙などの購入や管理の手間」(40.7%)、「封筒詰めやラベル張りなどの手間」(39.9%)が続いている。

 

まだまだ手作業の郵送が根強く残る

 それでは、郵送業務のコストや手間を低減する電子化の現状はどうだろうか。

 

 フリーの調査では、最も多い請求書の送付方法は「手作業での郵送」が46.9%、「クラウド請求書」が26.3%、「メール」が25.6%となっている。

 

 Sansanの調査においても、請求書の発行について、「紙の割合が高い」企業は62%、「電子の割合が高い」企業は22.5%だった。紙での請求書の発行・送付が根強く残っている現状がみてとれる。

 

コスト増大をそのまま受け入れる企業が4割も

 まだまだ紙の請求書が主流であり、かつ郵便料金の値上げでされる中で、企業側はどう対応を予定しているのか。

 

 キャノンMJの調査では、郵便料金の値上げに「既に対応している」企業はわずか6.5%、「対策を検討している」企業が40.8%である一方、「対策も検討もしていない」企業は“38.2%”だった。なお、検討中を含む対応策の72.2%が「電子請求システムの導入」である。

 

 Sansanの調査でも、郵便料金の値上げを機に「電子移行の検討を進めている」企業はわずか14.0%、「既に電子移行の検討を進めている」のは35.7%。そして41.9%の企業は、値上げを認識しているが「電子移行の予定はない」と回答している。

 

 総じて、半数ほどの企業が電子化を検討・導入しているが、コスト増大に際しても対策をとらない企業がまだまだ多く存在する。

 

電子化のボトルネックは「取引先との調整」

 それでは何が電子化のボトルネックになっているのか。

 

 キャノンMJの調査では、電子請求システム導入のハードルとして、「自社システムとの連携が難しい」が31.1%でトップ、「取引先との調整に手間がかかる」(29.2%)、「システム導入時の具体的な費用対効果がわからない」(23.6%)が続く。

 

 またフリーの調査では、「取引先に関する対応・合意取得」が電子化のボトルネックという回答が中心で、既にクラウド請求書に切り替えた企業からの回答でもそうした声が多かった。

 

 今後予定される郵便料金の値上げは、請求書の電子化の契機のひとつになることは確かなものの、紙での郵送がなくなるには、取引先も含む社会全体でのDXが押し上げられること、もしくは政府主導での移行支援など、もう一歩大きなブレイクスルーとなる出来事が必要になりそうだ。

 

 

■本記事で取り上げた各社の調査

 

・キヤノンマーケティングジャパン(郵便料金の値上げに関する実態調査)

対象:請求書の発行を紙中心で実施している企業(従業員数300名以上)の経理担当者106名

調査期間:2024年6月17日~6月26日

 

・インフォマート(郵便料金値上げに関する意識調査)

対象:郵送業務に関わる、20代~50代の会社員481名

調査期間:2024年5月30日~6月5日

 

・Sansan(請求書の発行業務に関する実態調査)

対象:請求書を取り扱う業務を担当する経理担当者726名

調査期間:2024年4月16日~2024年4月19日

 

・フリー(請求業務の現状と郵便料金値上げへの対策に関するアンケート調査)

対象:従業員数11名~1000名の企業で請求業務に関わる経理・総務担当社員1000名

調査期間:2024年4月9日~4月12日

 

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp